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『おとうさんのちず』ユリ・シュルヴィッツ

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8 月に入って中旬頃までは、いろいろな図書館に行くたびに戦争に関する展示や本の紹介を目にしました。
テレビを見ていても戦争関連のドキュメンタリーや番組が数多く放送されていました。

もうすぐ 9 月・・・図書館の展示は震災や防災のそれに替わり、テレビ番組も おそらく震災や防災関連番組になっていくのでしょう。

日本の過去のできごとに関連付けて今を考えることも大切なことだけれど、海外の国々で起こったことや起こっていることに目を向けることも忘れてはいけないですよね。

『おとうさんのちず』という絵本があります。
作者のユリ・シュルヴィッツさんはポーランド生まれ。
第二次世界大戦で故郷を失い、両親と一緒にソ連のトルキスタン(今のカザフスタン)に逃げのび、4歳から10歳まで暮らしたそうです。
その時の実体験を描いた絵本です。

何も持たずに逃げ延びたトルキスタンでは、もう一組の夫婦とユリさん一家が狭い部屋に住み、食べ物もほんの少ししか手に入りません。
ある日、パンを買いに市場に行ったお父さん。
なかなか帰ってこないお父さんを心配する僕とお母さん。

やっと帰ってきたお父さんが持っていたのは長い巻紙!?
お父さんはパンではなくて、大きな世界地図を買って帰ってきたのです。

 ぼくは おこった。
 ひどい おとうさんだ! ゆるせない!

でも、次の日、お父さんがその地図を壁に貼ると・・・・・・
ぼくは、その地図に夢中になります。
ひもじさも、貧しさも、寒さも暑さも忘れて地図の世界で空想の羽をはばたかせます。
砂漠に海辺に雪山に・・・果樹園にオアシスにビル街に・・・

さいごの文章は、こうです。
 ぼくは、パンを かわなかった おとうさんを ゆるした。
 やっぱり おとうさんは ただしかったのだ。

この絵本に書かれているのは第二次世界大戦の時の話だけれど
今も地球上のどこかで、食料だけでなく夢や未来を求めている子ども達がいることを、この絵本を読んで強く感じました。


おとうさんのちず.jpg
おとうさんのちず
  •  作:ユリ・シュルヴィッツ 訳:さくまゆみこ
  •  あすなろ書房
  •  2009/05
  •  32p

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