★あらすじ
チェコの人
チャペックさんがスペイン旅行したのは1929年10月。国際急行列車に揺られてヨーロッパを横断しての旅だった。もちろん、寝台列車。夜の暗闇の中を疾走する列車の車窓からは何も見えないことを嘆いている。「そこに巨人がいたのか、風車だったのかわからない」と、ドン・キホーテを意識しての描写がそれを伝えている。
スペインで語るべきは「
太陽の門(プエルタ・デル・ソル)」だ。その広場は世界の中心であり、マドリッドの萌芽の地なのだ。警官は郷士のようであり、新聞売りは侯爵様か十字軍戦闘指揮官のよう、靴磨きもシャム(タイ)のダンスを踊っているようだ。
トレドは中世の街だ。アラブ風の小路の向こうには、パティオと呼ばれるムーア風の中庭があり、マジョリカ焼きのタイルが敷き詰められている。さらに進むと、ゲルマン系西ゴート族の柱があり、モサラベ人の壁がある。さらにはムデハル人のミナレット(塔)が聳え、ルネサンス風の宮殿があり、ゴシック風の家やプラテレスコ様式のファサードのあるモスクが建っている。
ベラスケスは高貴だ。彼にはカミソリのように鋭い冷徹さ、容赦ない注意深さがあり、当時の王様が彼を高官にしたのは彼を恐れたからだ。彼はレースで飾られた哀れな操り人形を描いた。また、宮廷の高貴さを無意識のうちに戯画化している。彼はあまりにも目がよく見えたから。
ゴヤの作品を観るために、マドリードは巡礼すべき場所である。ゴヤや攻撃的であり、革命的である。ゴヤは、バルザックに輪をかけた、政治的アジテーターとも言うべき画家である。
★基本データ&目次
| 作者 | カレル・チャペック |
| 発行元 | 筑摩書房(ちくま文庫) |
| 発行年 | 2007 |
| 訳者 | 飯島周 |
- Ⅰ
- 国際急行列車
- ドイツ、ベルギー、フランスを通って
- カスティーリャ地方
- 太陽の門
- トレド
- 血の酒場
- Ⅱ
- ベラスケス またはスペイン貴族
- エル・グレコ または信仰
- ゴヤ またや裏返しの人
- その他の画家
- Ⅲ
- アンダルシア地方
- セビーリャの街路
- 格子窓と中庭
- 風見の塔
- 王宮
- 庭園
- Ⅳ
- スペイン女性の美 マンティーリャス
- ジプシー居住区
- 闘牛
- 普通の闘牛
- フラメンコ
- Ⅴ
- 酒蔵
- スペイン風の帆船
- 椰子の木と、オレンジの木
- ティビダボの丘
- カタルーニャの輪舞
- ペロタ
- 鋸山モンセラート
- 帰途
★ 感想
紀行文ってのはこういうのを言うんだ、と思えるくらい魅力的な文章。旅先で見聞した文化・風俗・慣習、そして人々の様子を、ただ客観的に描写するのではなく、自分の解釈を旨く含めながら描いている。事実と意見のバランスがいい、ということだろうか。私もこのブログで旅日記を書いているが、こんな風に書けたらいいなと羨ましく思える。まったく、何が違うのだろうか。
戦前のスペインは、今とはだいぶ様子が違っているのだろうけど、昭和の初めと今の日本との比較を考えると、共通点というか普遍的なものがまだまだあるんじゃないかと思える。私もスペインのバルセロナにはちょこっとだけ行ったことがあるが、そこで感じた人々の様子はチャペックさんの感じたものと似ていなくもない。ただ、チャペックさんはガウディの作品群に多少の違和感を感じていたようだけど、私が見たそれらはバルセロナそのものに感じてしまった。これは“自分の解釈”というフィルターの違いなのかな。まあ、そんな違いがあるからこそ、旅は楽しいし、やっぱり自分の目で見てみたいなと思えるのだろう。
各地方の違いをわかり易く紹介してくれているのがいい。同一の国とはいえ、歴史的な経緯が異なる各地方では“民族”の違いも生じる。この点は日本に生まれ、暮らしていると今ひとつピンとこない点。民族の移動や宗教の縄張り争いが絶えないヨーロッパならでは。その国や人々を理解するには知らねばならないポイントの一つだ。ちょっと旅行で訪れた程度では気が付かない・分からないものなのだが、チェコ生まれのチャペックさんはそれらを見抜き、描写してくれている。良い勉強になる。
ということで、また旅に出たくなりました。スペインに行ったことがある人にも、これから行こうとしている人にも、おすすめの一冊です。
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