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エコール・ド・パリ殺人事件 レザルティスト・モウディ

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エコール・ド・パリ殺人事件 レザルティスト・モウディ (講談社文庫)

エコール・ド・パリ殺人事件 レザルティスト・モウディ (講談社文庫)

  • 作者: 深水 黎一郎
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2011/05/13
  • メディア: 文庫



評価:★★★

メフィスト賞を受賞した作者の、受賞第一作。
世界を股にかけるフリーター探偵・神泉寺瞬一郎が登場する
「芸術探偵」シリーズの第一作でもある。

タイトルの「エコール・ド・パリ」とは、
第二次大戦前のパリに集った画家たちの総称らしい。

彼らの作品を集めていた画商・暁宏之が密室状態で殺害される。
舞台だても登場人物も、ある意味オーソドックスな本格ミステリ。
ページ数で残り1/4あたりにさしかかると、
「読者への挑戦状」なんてものまで入ってるんだから。

本格ミステリって、事件発生から解決までの途中を
どう面白く読ませるかが大事だと思うんだけど、
その点この作者は充分合格点を上げられると思う、

探偵役が変人なのはお約束として、
捜査に当たる大癋見(おおべしみ)警部(すごいネーミング!)を
はじめとする警察官たちに個性的なメンバーが揃っていて、
彼らの登場するシーンはユーモア・ミステリ仕立てなってる。

そして何より、各章の冒頭に「レザルティスト・モウディ」という本の一部が
長めに引用されているんだが、これが結構面白い。

ちなみに「レザルティスト・モウディ」とは「呪われた芸術家たち」と言う意味で
殺害された暁宏之が書いた「エコール・ド・パリ」の解説本の題名、
と言う設定になっていて(つまり作中作になってる)、この内容がまた面白い。

私は自慢では無いが、美術的素養は皆無な人間で、
中学校時代にもらった美術の成績は、人に言えないくらい悪かった。
(ホントに自慢にならんね)

そんな私でも、パリに集まった画家たちの生活ぶりや作風、
芸術へのめり込み具合を描いた内容はとても興味深く、面白かった。
作中作としての「抄録」でなく、単独で1冊にして出して欲しいくらいだ。

あと、この「抄録」部分は事件解決への伏線も含んでいる。
(だって文庫裏表紙の惹句にそう書いてあるんだもの)
だからそのつもりで読んでたんだけど、
どこが伏線になってるのか、さっぱりわからなかった。
でも、読み終わってみると「そこだったかぁ!」ってなるのは、さすが。

犯人当てとしてみると、容疑者があまり多くないので、
なんとなく「こいつが犯人じゃね?」って感じで
当てること自体は、そんなに難しくない。

しかし、密室構成のトリックを含めた事件の全貌を看破することは
かなりのミステリ読みでも難しいのではないか。
特に××は全く気づかなかったよ。けっこうあからさまに提示されていたのに・・・

とっても凝っていて、かつ読んでいて楽しい、良くできているミステリ。


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