はげまして、はげまされて~93歳正造じいちゃん56年間のまんが絵日記~
- 作者: 竹浪 正造
- 出版社/メーカー: 廣済堂出版
- 発売日: 2011/10/04
- メディア: 単行本
内容紹介テレビ朝日系列で放送されている『ナニコレ珍百景』は、見ていて面白い番組である。日本にはこんなに面白い人がいるんだ、こんなに面白い風習が今も残っているんだと気付かされるし、紹介される側の人々も、自分が普段から当たり前のようにやっていることがこれだけユニークで、皆から注目されているのだと知ることができ、自尊心も高まる。 そんな番組で紹介されたのが、93歳のおじいちゃんが今まで56年間も記録して来られた絵日記である。 最近、僕は事あるごとに日記をつけておく重要性を訴えている。自分自身がちゃんと日記を付けていなかったことで、後で振り返ってあの時どこで何をしていたのかが思い出せないという事態に度々直面するようになった。覚えていても、それが時系列上で整理できていないから、あれとこれとはどちらが先だったか、何の機会にそこに行ったのか、記憶があやふやになってしまっているのだ。 もう1つ、僕はこのブログでも累々述べてきているが、いずれ父と母の記憶を言葉にして記録に残す作業をなんとかやりたいと考えている。本当は、父や母が自分でそうした記録をちゃんと残しておいてくれたら良かった。ひょっとしたらやってくれているのかもしれないが、父や母の世代の若かりし頃の出来事は、子供であった僕らには見えていなかった世界があったことと思うし、僕らが生まれる前に起きた出来事については、僕らは我が子、父と母にとっては孫の世代にちゃんと語り継ぐことができない。文章化するのは手間もかかるかもしれないが、ビデオ撮影して映像として記録を残しておくことはもっと簡単だろう。 そういった昨今の僕の問題意識からすると、本書はストライクゾーンど真ん中ということになる。描かれた絵を見れば当時の暮らしの様子、服装や髪形、使われている家具や食器類、食事や風習などが窺える、相当に貴重な民俗学的資料になると思う。このおじいちゃんの絵はプロ級のうまさだ。表情だけでなく、動作の描き方も素晴らしいし、空きスペースに書き添えられている文章の文字もきれいにアートしている。おじいちゃんがどういう動機でこれだけ長いこと描き続けてこられたのかはわからないが、物置の段ボール箱の中にしまわれているだけではもったいないくらいで、今回こうして書籍化されたのは大正解だと思う。登場するご家族の皆さんも、いいおじいちゃんを持っておられることを誇りに思われるに違いない。 ちょうど、『ナニコレ珍百景』でその後のおじいちゃんを紹介した映像がYouTubeにアップされていたので、以下に貼り付けておきたい。どういうおじいちゃんなのか、どういう環境の中で暮らしてこられたのか、これを見るとだいたいイメージできそうだ。 昭和62年に奥様に先立たれた前後のご様子は涙を誘う。体調がすぐれないと訴えて入院するまではわずか2週間足らず、そこから1ヵ月でお亡くなりになってしまう。その後もしばらくは奥様が出て来られる夢を見た話とか、1人で食事をとるシーンとか、寂しさを誘う絵が綴られている。
93歳のおじいちゃんのまんが絵日記「はげまして、はげまされて」には生きることとは、嬉しいこと、楽しいこと、悲しいこと、辛いこと、さまざまな出来事がある。その一つ一つを乗り越えていくのに、おじいちゃんはたくさんの人に励まされてきた。そしておじいちゃんもたくさんの人を励ましてきた。今この世の中にあって家族の絆を確かめられる、家族を想う気持ちを考えさせられる一冊。この本を読み終えたとき「自分も誰かに優しくなろう」と思えるはずです。