当該書籍は、(乱暴な表現ですが) 『メイキング オブ 小説家 宮城谷昌光』 といえようかと思います。文壇という世界があって、作家の師弟関係がまだ存していた時代にひとりの作家として宮城谷さんがデビューするまでのいきさつ(また、その後のようす)を知ることができます。自分独自の文学を生み出すためにたいへんなご苦労をされたのだなということがわかります。その苦労のなかみ(文学的にたいへん誠実であること)も了解できます。 本文は、第1章、『時代の証言者』(「読売新聞」2014年11/24~12/30 掲載)、第2章『おまけの記』、第3章『未発表作品』、それに『年譜』とからなっています。 第1章『時代の証言者』を読みつつ、インタビューを受けたものをそのまま掲載したように感じ(事実そのとおりなのですが)、なぜ単行本化するときに、加筆してもっと中身の詰まった印象のあるものにしなかったのだろうと疑問に思っていましたら、第2章の末尾(『おまけの記』26)に、『時代の証言者』のインタビュアーの方「が誠心誠意おこなってくれた仕事の形をこわしたくなかったので、記事にいっさい手をつけず、保存するような体裁で本にしてもらえるように、中央公論社の」編集者に依頼した旨が記されていました。そういうわけで、おもしろい方式ですが、『おまけの記』には、『時代の証言者』の参照ページが記されていて、併行して読むこともできるようにされています。要するに、加筆部分を独立させものが(まさに文字どおり)『おまけの記』となっているということです。(そうであれば、その旨を『まえがき』に記して、『時代の証言者』の各頁に、加筆部分である『おまけの記』に案内する参照ページをを明示した方が良かったように思いますが、そうしなかったのは、宮城谷さんの人柄なのでしょう。優しい方なのだなと感じます)。 第3章には、なかなか勇気のいることだと思いますが、高校、大学時代から25歳までの、いわゆる習作時代の「未発表作品」が掲載されています。功成り名を遂げ流行作家となった今でも、ご自身にとって大切な作品であるにはちがいないのでしょうが、それでも、人前に出すには、若書きの青臭さを感じて、憚られるところもあったのではと想像されるのですが、よく掲載を決断されたと思います。 思うに、当該書籍全体をとおして、小説家志望のひとびとを励ます意図が窺われます。そのように感じます。「文学」と称するものが氾濫しているなかで、独自の文学の創造に誠実に取り組んでいる方にとっては、まさに朗報であり、なぐさめとなろうかと思います。
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