評価:★★★☆
2011年。9.11テロの起こる日。
24世紀からアンドロイドの大群がやってきた。
彼らは自らを「ガーディアン」と名乗り、
世界中の軍隊を無力化し、あらゆるテロを未然に防ぐ。
彼らの目的は「人間に奉仕すること」であり、
「不幸になる人間を減らす」ために、歴史を次々に改編していく。
主人公は「山本弘」というSF作家で、もちろん作者自身を投影してる。
それ以外にも、妻の「真奈美」さんなど、
実在の人物をたくさん登場させているのも本書の特徴の一つ。
この「真奈美」さん、なかなか可愛らしい奥さんに描かれている。
作者の奥さんもこんな人だったら、羨ましいところである。
小学校だか中学校だかの頃に読んだ、
ジャック・ウィリアムスンの「ヒューマノイド」という本が
(たぶん子ども向けに易しく書き直されたものだと思うのだが)
確かこんな話だったなあ・・・と思ったのだが、
(この本ではアンドロイドたちは宇宙の彼方から来たんだけど)
この「去年はいい年になるだろう」も、作中で主人公がこの作品に触れていて
ちゃんと元ネタの一つだということを明示してる。
全地球的規模で起こっている異変なんだけど
それをあくまで一個人の視点から描いている。
「ガーディアン」による "奉仕" により、はたして人類は幸福になっていくのか?
そのあたりも「山本弘」という個人の立場から語られていく。
特に、「真奈美」さんとの中がだんだんぎくしゃくしていくのが
なかなかサスペンスだったりする(私も妻帯者なので身につまされる)。
「ガーディアン」の出現で起こった世界的混乱を
主人公とその妻の間に生じた変化で、直感的に読者に実感させるわけだ。
タイムトラベルにつきものの「タイム・パラドックス」もからんで、
最後はなかなか苦い結末を迎えるのだが、
ちょっぴり救いのあるラストなので、読後感は悪くない。
上下巻合わせて600ページ近い大作なんだけど、読み終わってみると、
「山本弘」から「真奈美」へ向けた「壮大なラブレター」というか、
「壮大なノロケ話」を読んだような気になってしまったよ。
あ、勘違いされると困るんだが、これは褒めてます。
「ダンナが奥さんにベタ惚れなことを大々的に描いた小説」なんて、
本物の奥さんであるところの「真奈美」さんはどう思ったのだろうね?