ヒッチコック監督の「鳥」原作として有名なデュ・モーリアの短篇傑作集です。こちらの表題作も映画の原作だそうですね。
幼い娘をなくした夫婦がたそがれのヴェネチアで奇妙な体験をする「いま見てはいけない」、陽光あふれるギリシャで休暇を過ごす教師が奇怪な事件に巻き込まれる「真夜中になる前に」、猥雑なエルサレムを訪れたツアー客一行の悲喜こもごもを描いた「十字架の道」など、異国情緒にあふれる作品が多めです。見知らぬ土地でのわくわく感と、ちょっとしたことで神経質になってどうしようもない気分は身に覚えがあり面白かったです。ただ、最終的にはそんなに楽しんでいられない事態になるんですけれども。
一押しは「ボーダーライン」ですね。父の死にまつわる謎を追いかけてアイルランドに渡るヒロインと一緒になって、次々に襲ってくる予想外の状況にひたすら翻弄されていました。ミステリかラブストーリーかサスペンスか、二転三転の果てにたどり着いた結末に呆然となります。本を取り落としそうになりながら、これ以上の真相はどこにもないと大いに納得しました。
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ダフネ・デュ・モーリア『いま見てはいけない』(創元推理文庫)
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