評価:★★★☆
明智小五郎みたいな名探偵や、怪人二十面相みたいな名犯人がいるのなら
「名被害者」がいてもいいじゃないか、というわけで
この物語のヒロイン・一条(仮名)は名被害者である。
つまり、名探偵が殺人事件を呼び寄せるように
一条さんは殺人者を呼び寄せてしまうのだ。
15歳の今まで、彼女を殺そうと画策した人数は
それこそ数え切れないくらいいたのだけれど、
それらはみなことごとく未遂に終わっている。
だって殺人が成功してしまったら、もちろん一条さんは死んじゃうので。
なぜか彼女を殺そうとする人は、寸前で失敗する。
計画自体の杜撰さから、天文学的な偶然まで、原因はさまざま。
だから
「殺意を持つ者が常に周囲に生まれる」という「とてつもない不運な人」
であると同時に、
「彼女をねらう殺人計画は必ず失敗する」という「とてつもない幸運な人」
だったりする。
(あ、彼女自身はちょっと変わってるとこはあるけど、ごく普通の女子高生で
殺意を抱かせるような凶悪なキャラではないので、念のタメ。
どの場合も、本人の知らないところで動機が生まれて、相手の方が勝手に殺しに来る。)
ラリー・ニーヴンの「ノウン・スペース・シリーズ」に、
「幸運の遺伝子」なんてのを持つ登場人物がいたような気もするが
よく覚えてない。なんせ読んだの30年くらい昔じゃなかったか。
一条さんはかなりの美少女なんだが、上記のような人生を送ってきたので、
価値観がかなり常人とかけ離れてる。
そのへんは読んで確かめて下さい。ほんと面白いキャラになってる。
ラストはけっこう壮大な話になっていく。
こういうバカバカしいホラ話、大好きだぁ。
巻末に、「イラストギャラリー」があるんだけど、これは必見。
本書のイラストは「優」という人が書いてるんだけど、
一条さんは、ショートカットで目も顔もまん丸な女の子に描かれてる。
この絵、いいなあ。私の好みだ。