俺はふつうのサラリーマンだった。だが心の中ではなんで俺がこんなつまらない組織の中に埋もれていなけりゃあならないんだと常に考えていた。俺の中に眠っているこのポテンシャルは、日本を、いや世界を変えるような場所に置かれなければ発揮できないんだ。
ある日思った。
そうだ、もし俺が戦国時代に生きていたら、織田信長や家康を打倒してこの国を統一していたのに!
あまりにも素晴らしい思いつきに頭に血が上ってしまったのか、くらくらして目の前が明るすぎる光にあふれて気を失ってしまった。で、気がつくとここにいたというわけだ。
ここというのはまさに戦国時代。俺はタイムスリップしてしまったらしい。
「やや! 面妖な姿の異形の者がおる!」
戦国時代の農民に見つかってしまった。
ははぁ、こいつらは洋服というものをまだ知らないんだ。それも今日の俺の格好ときたらすざましくカラフルだもの。そりゃあ驚くよな。ところで、この成り行きからして、俺はお上に連れて行かれて、そこで大名か何かに差し出され、俺が未来から来ただなんて説明しても理解されず、「うむ、面白いやつだ」ということで召し抱えられることになり、そのうち噂が広がり織田信長とかに会うことになって、「それがし、わしの家来にならんか?」なんていうことになり、さまざまな戦に参加するも俺は過去の事実を知っているからさまざまに進言できるので、それが勝利に結びつき、やがて俺は信長の右腕にまでのし上がって、やがて秀吉のように天下を取ることになる……こんなような筋書きなのだとすっかり信じ込んでいた。
あれから三年。俺はお上に差し出されることも、信長に見出されることもなく、河内の奥にある農村で下働きをし続けている。
「おめ、働かねえなら飯はやらんけ。ええか? しっかり耕すんや!」
これじゃぁサラリーマンの方がましだ。毎日毎日田畑で下働きをさせられて……俺のポテンシャルはこんなところに置いておくべきではないのに!
了
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