久々に本の紹介です。
お盆休みでお墓参りに行った帰りに、弟と本屋に寄ったときに見つけました。
たくさん新刊も出ていたけれど、何故かタイトルに惹かれたので。
今の時代より、もっともっと人が自然と近くて、人の生活と不可思議な存在との距離もうんと近かった頃の、美しくも切ない短編集。
詩人である与謝蕪村を主人公に、彼と彼の出逢う縁を通じて語られる妖の世界は、現実とは違う世界の存在でありながら、優しさに溢れ、時には悲しみややるせない怒りに人々を惑わせ、切なさに涙し、それでもなお、人と妖の心根の美しさに感動させられます。
小説宝石新人賞作品である『梅と鶯』も収録。
儚げな感じで現れる幽霊と主人公の植木職人との不思議な縁を、傍らを囲む登場人物のそれぞれの深い想いで紡がれる、幽霊成仏までのお話ですが、おどろおどろしさは無く、絵のように美しい梅を愛でる一場面の語りが随所に思い出されるような、儚く、仄かに香る甘酸っぱい梅の花に酔わされたような、御伽噺でした。
お盆で墓参り後……というシチュエーションで選んできた本ではありますが、これもご先祖様のお導き、ということでしょうか(笑。
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