がっくりと俯いた萌に、
かすかな声が聞こえてきた。
<……も……え…あ………め…ない…で…>
「何!? 誰…!?」
パーシングが
鉄観音の装甲を引きはがそうとする
いやな金属が響くなか
耳をすましてみる。
<…萌…あきらめないで…私たちもいっしょに闘うから…>
「は…華子さんっ!? 無事だったのっ!?」
<--急いで…時間がないの…
『千手観音大悲心陀羅尼』って唱えて…
そうすれば私たちもここで……>
「わかりました!
--せんじゅかんのんだいひしんだらにっ!」
促されるまま萌が呟くと、
コクピットの中にアナウンスが響く。
『鉄観音リミッター解除--
鉄観音最終形態蓮華王モードニ移行シマス』
<――これで私たちもいっしょに闘える…。
萌、私たちをいつも大事にしてくれてありがとう…。
私はいつもここにいるから…>
「華子さんっ――!!!!!」
これが最後の会話だと
直感的に理解した萌の悲鳴にも似た声がコクピット内にこだまする。
コクピットのモニタがホワイトアウトすると同時に
全身がまばゆい金色に輝き出した鉄観音に
散乱していた五百羅漢のパーツが吸い寄せられていく。
「…な…なんだこの光は…」
パーシングが思わず後方に飛び退(すさ)ると
その光がゆっくりと収まっていく。
光がひくと
そこには黒い装甲に包まれ、
抜き身の刀を持った巨大なロボットがそびえ立っていた。
つづく
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