本の装丁といえば、作品社が1998年5月に日本の名随筆別巻87として「装丁」という本を出版している。この中で、谷崎潤一郎氏をはじめ、古今の作家が装丁談義をされており、こだわりがあって面白い。百科事典や豪華本の装丁ばかりでなく、ちょっとした表紙の個性だけでも読者にとっては楽しい。表紙がその小説の内容や個性を引き出してくれる。
表紙の素材について調べてみると「布クロス」や「クロス」と呼ばれる素材が本の表紙に使用されたことがわかる。英国では、印刷技術が進み大量生産が可能になると、それまで表紙に使用されていた皮ではとても需要を補えず、染色した布に加工を行って本の表紙に使用した。日本では日本クロス工業(現在のダイニック株式会社)が初めて国産化して生産している。皮に似せた外観を持つ表紙から表面に絵や写真などでお化粧をして本の内容ともマッチした表紙まで、個性に満ちた本があふれている。電子化されてタブレットで読む時代到来ともいわれているが、本の持つ個性は残してほしい。表紙や製本については東京都製本工業組合が運営する「製本のひきだし」というサイトにも紹介されている。↧