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第13回「大人の夜の読書会」山極寿一『暴力はどこからきたか―人間性の起源を探る』

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第3章「性をめぐる争い」を読む ●前回第12回読書会では第2章「食が社会を生んだ」を読んだ。第1章「攻撃性をめぐる神話」で「霊長類が暴力を呼び起こす争いの源に食物と生殖対象の確保をめぐる葛藤がある」と指摘した山極は、「食物と社会の形成の関係」に触れるこの第2章において、霊長類の進化する過程での「食性の変化―身体性の変化―社会性の変化」に言及した。 ●それまでの昆虫を主食とした夜行性の霊長類が、樹上生活の中で立体的な把握力を獲得し、昼行性に移行する過程で果実を見分ける色彩認識力を身に着け、知的能力を飛躍的に発展させてゆくというくだりは、旧約聖書のあの物語――楽園でアダムとエヴァの食った「知恵の木の実」の、進化上の意味を彷彿とさせて、とても興味深いものだった。そしてこの時、霊長類が経験した、果実のもつ「甘い!」という味覚の喜びが、昼行性の解き放たれた感性と相まって、やがて人間の肉体と精神の中では、「どこにも無理のない、もっとも自然な魂の状態」を、「甘い」と感じるのだということも。 ●昼行性への移行の中で、やがて単独行動から集団生活が生まれ、人間の社会へと連なる独特の集団特性と葛藤が生まれてゆくのだが、今回読む第3章「性をめぐる争い」では、社会の形成に果たす「性のファクター」を、主に読み進めることになる。 第2章の「食」が「個体の維持」であるならば、第3章の「性」は、死で閉ざされる個体の継続性―命の連続系に触れることになるのだろうが、この「性をめぐる葛藤」とその解消をめぐる知恵が、どのように「家族」の形成に繋がってゆくのか――というあたりがポイントだろうか。 ■使用するテキストは、『暴力はどこからきたか―人間性の起源を探る』(山極寿一/NHKブックス)です。参加される方は、同書中第3章「性をめぐる争い」を読んできてください。


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