『高機能自閉症児を育てる　息子・Ｔの自立を育てた20年の記録』高橋和子

自閉症の息子を持った著者が、 研究者を目指していたという著者自身の探究心と、 周囲の理解者・支援者に支えられながら、 著者の息子にとってよりよい子育てに取り組んだ記録。 ジャカルタから帰国したとき、 日本がなんとなく変わったような印象を持ち、 その原因はなんだろうか、と考えている中で いわゆる「発達障害」という言葉に出会った。 以前なら、なんとなく周りがサポートして 社会に溶け込んで生きていくことができたかもしれない程度の障害が、 今の日本では大きな障害となる。 少しでも周りと異なることが大きな問題となる。 そんな日本にカルチャーショックを受けた。 さらに、日本での新しい職場には、 「独特の個性」を持つ人が実にたくさんいて、 どうすればお互い気持ちよく付き合えるのか、 を考え続けなければならない日々が始まった。 そして、何冊も何冊も、発達障害に関する本を読み漁るようになった。 とはいえ、 発達障害そのものがどのようなものか、 という書籍ですらまだ不十分な現状で、 実際にどのようにサポートしていけばよいのか、 をこれだけ丁寧に書いたものは初めて読んだ。 著者が書いているように、 すべての高機能自閉症児にこの本のやり方が あてはまるわけではないが、 「子どもの個性・特徴（こだわり）を見極めて適切な対応を探す」 という意味では共通のヒントがたくさん含まれている。 また、周囲への理解と協力・支援を求める際に 具体的にどのように話せば伝わりやすいのか、 についても大きな助けになる記述が多くあった。 高機能自閉症と診断された息子を持つ友人に、 早速、国際郵便で届けたい一冊である。