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地縛記憶2: 京都、地脈の乱れ(第2回)

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 仲直りした二人は銀閣に向かって歩き出し、まもなく、初老のカップルとすれ違ったが、その二人が交わした言葉が男の耳に残った。 「あの橋から転落して死ぬなんてね」 「あそこは確か……昔、処刑場だったところじゃないか。 石田三成もあそこで首を切られて、三条河原で晒し首になったらしいけど……もしかしたら、その祟りかもな」 「おお怖っ」 「冗談だよ、アッハッハハ」  男は立ち止まり初老のカップルの後ろ姿を見送っていたが、ふり向くと女に言った。 「何か、事件みたいだな」 「そう、事件、た、ぶ、ん、鴨川にかかった橋からの転落死のことじゃないかな」 「鴨川の橋か……だけど、ただの橋じゃ、なさそうだな。 あの橋とか、処刑場、石田三成、そして、最後は祟りだとさ……何かわけありじゃん……」 「橋の名前は……たしか……正面……そう正面(しょうめん)橋(ばし)だったと思う」 「ええっ、お前さ、なんでそんなこと、知ってんだ?」 「だって、今朝の朝刊に載ってたじゃん」 「おい、俺、それ、読んでねーぞ。 そんなわけありの事件……載ってたんなら、俺にも教えろよ」 「何言ってんのさ。新婚旅行に来てまで、わけ分かんない事件に、顔突っ込むことないじゃん。 だいたい、ここは京都だよ、うちらには関係ないでしょう」  女に言われて男は暫し納得したような顔だったが、まもなく厳しい表情に変わった。 「いや、そうは言ってもな、俺たちさ、治安を守る警官だろう。 京都だからってさ、そんな、知らんふりなんてことには、なんねーだろう」 「あーっ、かっけいいじゃん。そうだよね。 私さあ、信吾の、そういう刑事まっしぐらーってとこがさ、好き、だーい好きっ、えへっ」  女の機嫌はすっかり直っていた。 女の言葉に男は笑みを浮かべ頭を掻いた。                                                      続く


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