軍事力を含む国力、金正恩の政治力などを総合的にとらえ、 北朝鮮の今後について見極めた一冊。 幅広い情報に基づいた分析は非常に説得力があり、 「そのとき」日本がいかに対応すべきか、の検討の必要性を実感した。 金日成に始まる北朝鮮。 2代目の金正日が死去した跡を継いだ 金正恩の若さに、 「北朝鮮はどうなっていくのか」と漠然とした不安を抱いた人は 国際社会に多くいたはず。 金日成はともかく、 金正日が優秀な支配者だったとは思わないものの、 金正恩と比べれば、 国内、特に軍部、党内の統率力、組織力 という意味では優れていたのであろう。 さらに、正恩が後継者となったのは 比較的、急な展開で、 後継者としての教育そのものも不十分だった、、、 という側面があるかもしれない。 いずれにせよ、「オレ流」を押し出したい正恩が、 父の代から権力の座にあった多くの人々との間に 確執を生んでいること、 長期的な展望、広い見識や知識に乏しいままで 思い付きとも言える政策(と呼べるかどうかも疑問だが)を 講じていること、 などなどが明らかにされ、 正恩自身が急に成長しない限り、 確かに北朝鮮は崩壊への道をたどることになるだろう。 ただ一方で、核弾頭ミサイルの開発を進めていることも確か。 これが実践配備可能な状態になれば、 大変な世界情勢につながる可能性は高い。 国内でクーデターが発生し成功につながるか、 正恩の支配そのものが実質的に崩壊するのが先か、 核弾頭ミサイルの完成が先か。。。 いずれにせよ、北朝鮮が崩壊または実力行使を行った際に、 日本がどのように拉致被害者や在朝鮮日本人を救出するのか、 独自の戦略構想のほか、 米韓軍との十分な調整の必要性も、強く感じたと同時に 対北朝鮮外交における日本政府/日本政治家の力量のなさを 改めて実感してしまった。 5月の飯島氏の訪朝が、次のステップにつながることを期待したい。
『北朝鮮はどんなふうに崩壊するのか』 惠谷治/著 小学館(小学館101新書) 2013年8月5日にほんブログ村 http://www.photolibrary.jp/profile/artist_102521_1.html