湯山が奇妙な格好で出社してきた。迷彩柄のスーツにヘルメット、しかもいやに着膨れしている。
「どうしたんだ湯山、その姿は?」
湯山はいやべつに、と言ったきり何も答えない。
「お前、そんなに肥えてたっけ? なんでそんなに着膨れしてる?」
ようやく湯山が答えた。
「い、いえ、これは……防弾チョッキを着込んでいるもので……」
「防弾? なんでだ?」
誰かが何かを落としたのかドン! という大きな音を立てると同時に 湯山は、あっ! と叫んで机の下に隠れた。
「いったいどうしたんだ、湯山?」
「ね、狙われているんです……」
湯山は情けない顔をしていった。
「いったい、だれに? まさかお前……」
ひと月ほど前に騒ぎになっていた事件が思い出された。外国でのテロ事件の後、つまらない動画をツィートで送り付けてきた日本人に、テロリストが怒って脅迫メールを送ってきたというあれだ。
「お前、テロリストになにかを送り付けたのか?」
「ち、違います」
「まさかお前、あの集団に参加しようなんてしてるんじゃあないだろうな?」
「ち、違いますよ!」
「じゃぁ、いったい誰に狙われてるんだ?」
「あ、あいする……」
「や、やはりISILかっ?」
「い、いえ……愛する女房に……」
「女房に?」
「彼女のへそくりを使ってしまいまして……」
了
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