デイナ・ヘインズの『クラッシャーズ』です。掛け値なしに、今年一番面白いミステリですね。 クラッシャーズとはアメリカ運輸省に属する航空機事故調査チームのことである。カスケード航空818便がポートランド国際空港を離陸した直後に墜落する。 事故直後に、病理医のトミー・トムザック が現地入りし、証拠となる現場保存をしながら、生存者の救出にあたるところなんか、しびれるぐらいです。スーザン・タナカが、主管調査官の任命を巡って、上司に啖呵を切るシーンも惚れ惚れしますね。調査官の一人でエンジンの分析を担当するピーター・キムは次のように言う。
それから掌を打ちあわせて埃を払うと、トムザックのまえに進み出た。「きみが主管調査官を務めるのは反対だった。しかし、トムザック、われわれはこの地で墜落事故調査の原因究明における最短記録を樹立することになりそうだ。それは事故直後にきみが現場を厳重に保存しておいたからだ。そのことを認めるのにやぶさかではない。おめでとう」みな一流の仕事人だ。その仕事ぶりも魅力だが、この墜落事故の裏にはテロリストグループによる企みがあった。しかも、そのグループは、次の飛行機の墜落事故を企んでいた。果たして、それを阻止することができるのか…。 惜しむらくは、すれっからしの読者からは、すぐ真犯人が登場したとたんに、それと判ってしまう点ですかね。すでに本国では続編も刊行されているようだ。楽しみな著者の登場ですね。