『生物とは何か?』 実宅成樹(しげき) 2013/03 著者は名古屋大学大学院教授。 生物物理学的に生物やゲノムのなぞを解説する本。 100ページくらいで簡単に読めると思ったら、とんでもなく難解だった。難解である時の大部分は専門用語が分からないというもので、この本もそう。 生物の特徴の一つは「一様性」。一様性の背景には、生物を作り出す分子的メカニズムが全ての生物で同じだということがある。生物が生きていくための分子的仕組みをセントラルドグマと呼ぶ。 セントラルドグマは、DNAの複製、RNAへの転写、タンパク質(アミノ酸配列)への翻訳、という3種類の反応から成る。大腸菌から人間まですべての生物に共通している。 生物の身体は非常に複雑に見えるが階層的にできており、割合簡単に作られているのではないかと述べる。 ヒトの遺伝子数は3万弱で、お米やゼブラフィッシュと同じくらい。階層的にできているため、それほど遺伝子数に差がない。 生物の身体は、タンパク質などの分子機械が構成する巨大なシステム。そのもっとも基本的なプロセスが分子認識。免疫システムも分子認識の最前線。 アレルギーの抗原(花粉など)の抗体との結合部分をエピトープと呼ぶ。あるタンパク質がアレルゲンとなるかどうかは、エピトープを解析して判明する。 遺伝子が1000個の塩基から成る生物の場合、4種類の塩基の組み合わせは、2^1000≒10^300通り。京コンピュータ(1秒10^16回)で、宇宙の年齢(130億年<10^19秒)だけ計算しても10^35回しか計算できないことと比べ、生物のゲノムの可能性は膨大である。つまり生物はこれまで全ての可能性のほんの一部しか試していないといえる。
↧