カードをかざすと コクピットに続く扉が開き、 素早く乗り込んだ萌は操縦席に着くと、 シートベルトを締めながら、 カードをスロットに差し込んだ。 『検非違使・桂木中尉萌と確認しました。 189秒後に長谷観音・二十八部衆が到着します』 鉄観音のAIが状況を知らせてくる。 「鉄観音マニュアルモードに移行。 長谷観音と二十八部は、 飛鳥本社に後退する部隊の護衛を。 鉄観音参るっ!」 一気に決着を着けようと、 必殺のパンチを繰り出す。 「薫子さまの分っ!」 よけきれずにパンチを貰ったパーシングが後ろにある木ごとなぎ倒される。 よろよろと起きあがってくるところに さらにパンチを浴びせた。 「江ノ島要塞の仲間たちの分っ!」 肘裏にあるブースターをふかしながらの拳が パーシングに命中したと思った瞬間、 拳がはじき返され、 鉄観音がバランスを崩して尻餅をついた。 「くっ…! なんて出鱈目(でたらめ)な強さなの…」 ガンっ! という音とともに衝撃が走る。 全周囲型モニタを観ると、 斬りかかる逸鬼を軍用サーベルでいなしながら パーシングが両手で鉄観音の装甲を 引きはがそうとしてるのが映っていた。 「……腕が再生してる…。 最新の機械工学とバイオ工学の結晶鉄観音でも、 歯が立たないの?」 滅多なことでは俯(うつむ)かない萌だが、 がっくりと肩を落とした。 つづく
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