お昼休みになると女の子たちは教室の隅っこに集まって噂話をするのが日課みたいなものになっている。
「ねぇ、亀子ちゃんってなんだかいつも臭くない?」
なぜか今日は風邪でお休みしている亀子ちゃんの話になった。
「うん、そう言えば少し臭い時ある」
「でしょーでしょー! 私、もうあの子と遊ばない」
「なんで?」
「だって臭いから」
確かに亀子はお魚の臭いがすることがある。お家がお魚屋さんで、時々お手伝いしているからだ。お家のお手伝いをしているなんて立派なことだし、でもでもそんなに嫌うほどのものじゃない。たぶんたくさん手伝ったときに少し手に臭いが残るのだろう。
そんなことより亀子はとてもいい子だし、そんな仲間外れになんかしちゃあかわいそうじゃないの。
そう思ったけれども、みんなが同じ話で盛り上がっているので私は黙って聞いていた。
「ねぇ、あなたもそうするでしょ?」
え? なに?
「ほら、ここにいるみんなが言ってるのよ。亀子は臭うって。あの臭いがうつっちゃうから、もう一緒に遊ばないって」
「もう……遊ばない?」
そんなかわいそうなこと。亀子ちゃんはちっとも臭くなんかないし、遊ばないなんて言わないでよ!
そう言おうとしたけれども、みんな同じ意見でまとまっていて、一斉に私を見ている。
「あら? あなたは亀子のお友達なの?」
うん、そうよ、みんなお友達じゃないの!
言おうと思ったけど、そうすると私までもが仲間外れにされてしまうかもしれない。それは困る。みんなが遊んでくれなくなったら、私の遊び相手は亀子だけになっちゃう? そんなの嫌だわ。
私はみんなが言ってることは絶対におかしいと思っていたのだけれども、それとは反対の言葉を発していた。
「そうね。当たり前じゃない。私も亀子は臭いと思うし、だからもう遊ばない!」
あたしがそう言うと、みんな満足げに頷いた。
「この、亀子の机、ちょっとみんなから遠ざけとこうよ」
一人が言うと、みんな同意していちばん後ろにあった亀子の机はさらに後ろへと移動されてしまった。明日、亀子が来たらびっくりするだろうな。思いながら私は亀子の椅子を机のところに動かした。
了
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