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カセットテープ

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 電車で本を読むせいか、つい人の読んでいる本が気になってしまう。新刊の場合はたいてい書店のカバーがついているが、図書館や古本屋での購入本では表紙をむき出しにして読んでいる人も多い。ブックカバーもなく表紙がむき出しになっていると、装丁が気になってしまう。先日も表紙にカセットテープが印刷された本を読んでいる人がいた。最近はカセットテープ自体珍しいため、カセットがブームになった1980年代の小説だろうと早速調べてみた。ところが、日本での翻訳書の出版は2006年の小説だった。「わたしを離さないで」というタイトルで2005年にカズオ・イシグロ氏原著で、2006年に土屋政雄氏翻訳で早川書房から発刊されたものだ。何故カセットテープが表紙に描かれているのか不思議だったが読むほどに理解できた。1956年にレコーディングされたジュディ・ブリッジウォーターの「夜に聞く歌」『Songs After Dark』というレコードがあり、それを録音したカセットテープを回想する場面が登場する。ポイントとなるためカセットテープを表紙の装幀に起用されたのだろう。ちなみに装幀は坂川事務所の坂川栄治氏と田中久子氏との記載があった。介護人や回復センターとの記述があるため、てっきり厚生施設に関するものかと考えていたのだが、実際はかなり重く、クローン人間の心境などをつづったものだった。


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