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『はるひのの、はる』 加納朋子

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「人と違うものが視えることがある」
そんなユウスケの前に「はるひ」という女の子が現れる。
「助けて欲しいの、ユウスケ」

ささらシリーズ第三弾
前二作「ささら さや」「てるてるあした」が
大好きだったので、
成長したユウ坊、相変わらずのサヤ、
さりげなく登場する懐かしい人たちに
久しぶりに会えてうれしかった。
お元気そうでなによりです。

散らばったピースがきちんとおさまる結末は
とても気持ちがいいです。
不幸が回避されて本当によかった。
たとえそれが自称エゴイストの目的に
付随するものだとしても。

どこにでもありそうな地方都市・佐々良
ありふれていながらどこか風変わりな街は
特別な力を持っているようです。
今回も不思議なことが起こりました。

「はるひ」は4回現れた。そのたびにユウスケは
謎めいたお願いを引き受ける。
最初は小学校に上がる前の幼いころ。
4回目は中学2年の夏休み。
そして高校生になったユウスケは
満開の桜の下の少女に出会う。

その出会いは謎解きへの第一歩。

母は最愛の娘のことを一身に案じていたのですね。
そしてささらの魔法が発動した。

カード、ユウスケの手元に届いてよかった。

以下、未読の方はご注意を


 

 

*

*

*

「わたしがとても残念に思っている変化があるのよ。
一週目と二週目とでは、決定的な変化が」
エマさんはそれが何かは言わなかったが、
うっすらと僕にもわかっていた。
そしてエマさんほどには僕はそれが残念ではなかった。

*

変化はユウスケの初恋の相手のことかな?

*
*

「わたしの目的はただひとつ。
ある薬が、少しでも早く開発されること。」

娘が早逝するという「間違った未来」を
阻止するために、死の瞬間に授かった能力を
エゴイスティックに最大限に駆使する。

薬が未来で開発されるのはわかっている。
しかし娘の遺伝性疾患の発病に
間に合わないかもしれない。

薬には、ある植物の成分が必須。
開発者は植物を「険阻な山奥」で発見。
しかし、近くの川原にもそれは生息していた。
川原に近づかなかったのは蛇が苦手だったから。

近くで「鷹」を飼っていた人物が存命だったら
川原に蛇がいない時期が長くなる。
すると蛇を嫌う開発者が植物を発見しやすくなり
薬が早くできあがる。

鷹を飼う老人の死の原因は
孫娘の身に起きた不幸なできごと。

だから「はるひ」は孫娘の死を回避させるために
ユウスケの前にあらわれた。
「助けて欲しいの、ユウスケ」

孫娘・美鳥が中学二年生の夏休み
もう一度、はるひは美鳥を救う。
無事に高校生になってユウスケと華の
クラスメイトになってもらわないといけない。

1週目の世界のイッサはいいヤツでしたね。
彼がいなければユウスケと華の関係は
違うものになっていたかもしれない。
ふたりが親しくなるのに時間がかかってしまい
ユウスケが「はるひ」に会うのに間に合わなければ
華との未来も変わってしまったかもしれない。

おびただしい数の断片が縒り合わさって
この世界は成立している。
なんてことを思いました。

はるひのの、はる

はるひのの、はる

  • 作者: 加納 朋子
  • 出版社/メーカー: 幻冬舎
  • 発売日: 2013/06/27
  • メディア: 単行本


「イラスト・十日町たけひろ」
あれ?菊池健さんじゃないの?
と思ったら改名されたのですね。

加納朋子さんの本の装画には
この方のやさしいタッチがお似合いです。


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