『尼さんはつらいよ』 勝本華蓮 2012/01
著者は尼僧。 尼さんの過酷な現状を紹介する本。
頭をきれいに剃りあげ、法衣に袈裟・・・一心にお経を唱えて・・・写経などをしている優雅で清楚な姿をイメージされるのではなかろうか。そんなイメージ通りの尼さんは今やほとんどいない。もしいたなら、「歩く文化遺産」、絶滅危惧種である。
仏教の「教師」という資格を持つ女性は、最新の統計で16万4千人もいるという。そのからくりは、ほとんどが新宗教教団の女性「教師」。つまり在家で暮らす有髪の女性仏教徒。
なぜ尼寺から尼さんが消えたのか。尼寺の中に入ってみるとわかる。そこでは心の平安や自由や自己実現は得られない。わざわざ苦を求めにいくようなものだ。著者も18年前に「尼寺から出家」した。
比丘・比丘尼はインドの言葉を音写したもので、パーリ語(俗語)では「ビック」「ビックニー」、サンスクリット語では「ビクシュ」「ビクシュニー」。
男性の仏教「教師」は18万人。教師の定義は宗派ごとに多少相違がある。既成仏教教団では、女性教師は極端に少ない。例えば天台宗では男僧4千人弱に対し尼僧4百人弱。
一歩尼寺の塀の中に入れば、そこは前時代的な封建社会。自分を殺して耐えるしかない。下の者に発言権はない。新入りは一日中掃除や炊事など「家事」に追いまくられる。まるで住み込み家政婦か介護ヘルパーといった状況である。
どの宗派でも、ほとんどの寺院は宗教法人になっているので、代表役員である住職を変更する場合には、他の役員の同意をもらう手続きが必要である。
台湾には尼僧が多く、尊敬を受けていることは有名。台湾では僧侶の80%以上が尼僧だそうだ。
日本仏教は葬式仏教と言われ、お坊さんへの風当たりも強い。しかし明治以降、日本の僧侶はバラモンになったんだと考えたらよい。バラモンは生まれで宗教者と決まる。
