「東京藝術大学大学美術館所蔵 柴田是真の植物図」
編著:横溝廣子/薩摩雅登
発行:光村推古書院
柴田是真(しばたぜしん)
柴田是真は幕末から明治にかけて蒔絵・漆絵・絵画で活躍し多くの名作を残した。
江戸で蒔絵師の元に入門し、また円山四条派の絵画も学び、蒔絵師としても絵師としても高い評価を得て、維新後は明治政府にも重用された。
海外でも是真の作品は人気が高く、その源にある卓越した造形力は彼の膨大なスケッチに示される鋭い観察眼に支えられた。
本書は、柴田是真の作品のうち、明治二十一(1888)年に竣工、昭和二十(1945)年に戦火で焼失するまで皇居として用いられた「明治宮殿」の千種之間と呼ばれた広間の格天井を彩っていた綴織の下絵と伝えられているものを中心に掲載された美術画集のようなものである。
辛夷、杜若、時計草、河骨、藤袴、楓花(たかおもみじ)、紅梅、昼顔、山吹、白菊、黄菊、鉄線など、あたりまえのことだが、丁寧にふんわりと描かれている。
他に、江戸時代の桜図譜の写しといわれており、糸桜、拾桜、泰山府君、伊勢、百枝桜、山川などが描かれている、桜の花の写生帖「桜華百色」。
また、柴田是真が残した95冊の写生帖から選ばれた草花、木々、果物、野菜などの植物図も見ることができる。
俳句を置かせて頂く。
山の日は鏡のごとし寒桜 高浜虚子
痛さうに空晴れてをり冬ざくら 黛執
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