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ロイ・ヴィカーズ『フィデリティ・ダヴの大仕事』(国書刊行会)

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天使のような愛らしさと驚くべき知謀を併せ持ち、悪辣な金持ちを相手に犯罪を仕掛ける可憐な淑女怪盗フィデリティ・ダヴ。彼女に心酔する部下たちを引き連れ、あるときは無力な女性への義憤、あるときは己の誇りのためにゲームを繰り広げる女賊の次のターゲットは… 世間で言われてるほど義賊ではないが悪女でもないしお飾りでもない、個人的な理由での仕事もするし人助けのついでにしっかり自分の利益も確保する、それでいてどこまでも控えめな態度を崩さない女主人公が印象的です。盗みだけでなく詐欺で罠を掛ける話も入っていますし、盗みの実行シーンではなく密かなたくらみとその結果に焦点が絞られている感じです。 変装術や機械、偽造など各分野のきわめて有能な専門家たちを率いているのはもちろん、当人がぱっと見以下にも地味でおとなしそうな女性に装っているところが大変好みでした。レギュラーキャラクターとして、ダヴと愉快な仲間たちに加え、常に彼女を疑っていながら毎回出し抜かれるスコットランド・ヤードの刑事が加わっているのもこのジャンルの王道らしくて楽しいですね。 第一次世界大戦後のイギリスという時代設定に沿ったシーンがたびたび登場するのも、昔のミステリ好きには嬉しいところです。時代背景を映してか宝石がたびたび標的になりますが、美術品を利用した詐欺の話が個人的には大爆笑でございました。主人公の勝利にすかっとしながらなおかつ笑えて、普段あまりこうしたジャンルの小説を読まないもので新鮮でした。 フィデリティ・ダヴの大仕事

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