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辞世その11

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 散りぬべき時知りてこそ世の中の花も花なれ人も人なれ 細川ガラシャ  今更解説の必要などなかろう。あまりにも有名なこの薄幸の美女の辞世は、潔さを称賛される。  有為転変の世にあって、この女性はキリスト教への信仰にかけた。父親が明智秀光だから、細川家としては世を憚って彼女を隔離・幽閉して距離を置かざるをえなくなる。元来は、夫忠興との夫婦仲は良かったという。  やがて、彼女はキリスト教信者になる。夫忠興は、豊臣秀吉によるバテレン追放令のため、激怒する。彼女は、今度はこころの拠り所を無くした。  そして、関ヶ原の戦いによって、再び運命は暗転する。人質になることを拒んだガラシャは、キリスト教では自害できないため、向家来に命じて我が命を絶たせた。この聡明で美しい女性は、しかし、運命に翻弄されて自分の生を思うようには生きられなかったのだ。失意の連続の中で、この聡明な女性は何を思っただろか。最後は武家の女として誇らしく、潔く散りたいと思っていたのだろうか。  現代では、アンチ・エイジングなどといって、加齢を遅らせようという考えの人々もいる。しかし、散るべき時に散らずに、ぐずぐずと生にしがみついていても、しかたがないのではないか。良寛が言うように「死ぬときは死ぬ」のが一番よい。まあ、しかし、生への執着はなかなか絶てないものだろう。


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