「エルサレム解放」 タッソ作 A・ジュリアーニ編 鷲平京子訳 (岩波文庫)
第1回十字軍における、キリスト教軍とイスラム軍の戦闘を描いた叙事詩です。
イタリア・ルネサンス期の詩人タッソの、大傑作です。
ずっと読めなかったこの作品が、抄訳ながら2010年に岩波文庫から出ました。
省略部分は、編者によって補われているので、とても分りやすいです。
キリスト側の大将は、ゴッフレード。冷静沈着で、完全無欠の騎士です。
天啓によって総大将となりました。常に天使が味方しています。
イスラム側の大将は、アラディーノ王。小心な老人です。
悪魔が見方しています。魔術師を使ったりします。
キリスト側の正義に対し、異教徒イスラム側の悪という図式です。
私はどちらかというと、侵略していったキリスト側が、悪だと思いますが。
ともかく最初から、正義であるキリスト側の勝利が、約束されています。
ところが面白いことに、魅力的な人物は皆、イスラムの女性なのです。
例えば、女戦士クロリンダ。
美しさゆえに、敵の勇者タンクレーディから愛されて、戦地では・・・
例えば、薄幸のエルミーニア姫。
敵の勇者タンクレーディに捕らわれながらも、彼を愛してしまい・・・
例えば、女魔術師アルミーダ。
敵の勇者リナルドに復讐を誓いながらも、彼を愛してしまい・・・
イスラムの美しき女性たちが登場すると、戦いの話が愛の話に変わります。
しかもすべてが禁断の愛。物語として、実に面白いです。
よくよく読んでみると、タッソの描き方は、案外公平かもしれません。
イスラム側の苦しい事情が、彼女たちの口を通して伝えられているからです。
この公平さゆえに、この作品は普遍的な価値を持つと思います。
後年、タッソはこの作品を改変し、「征服されたエルサレム」と題しました。
しかし、当時のキリスト教社会からは、不評だったとか。
ところで、ゲーテがタッソに感情移入していたことは有名です。
私は恥ずかしながら、ゲーテの「タッソオ」で、この詩人を知りました。
「タッソオ」 → http://ike-pyon.blog.so-net.ne.jp/2013-07-06-1
さいごに。(初めての映画館)
娘はこの夏ママと一緒に、初めて映画館に映画を見に行きました。
今までは、中が暗くなるのを怖がっていたため、入れませんでした。
見たのは、「モンスター・ユニバーシティ」。
とても面白かった、と言っていました。
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