「和風探索 にっぽん道具考」
著者:GK道具学研究所/山口昌伴
写真:本郷秀樹
発行:筑摩書房
GK道具学研究所
85年GKインダストリアルデザイン研究所基礎研究部門から、GKグループ12社の1社として独立。
所長栄久庵憲司。
道具を中心に現代生活文化の調査研究、工業製品のコンセプト提言、新種の道具開発の基礎研究を行う民間研究機関。
山口昌伴
GK道具学研究所副所長
37年大阪生まれ。早大建築家68年卒。
10年間建築設計監理に従事の後、GKにて生活文化研究の道に入る。
住居学・生活学・道具学。
本郷秀樹
35年金沢生まれ。日大医学部予科修了。
藤本四八氏に師事。現在フリー写真家。
子供の頃、友達の義父が経営している工場があった。
学校の帰り道によく立ち寄り、お茶を御馳走になった。
寒々しい工場の奥に小さな事務所があり、その出入口の端に縦長の四角い吸い殻入れのような火鉢(手焙)が置いてあった。
信楽の物であっただろうか。口の部分や足元が少し欠けていた記憶がある。持ち手には金属が掛けられており、持ち運びも容易であったようだ。
手をかざし、少し時間をかけると熱が皮膚を抜け爪に温かさが伝わり、暫くのあいだその温みが残る。
本書は、いまだに使用されている物、急に需要がなくなった物、形を幾度となく変えて使用されている物、以前は日用品に使用されていたが現在は文化的に扱われている物など、和風の正体を探る書き物である。
風呂敷、柳行李、鏡台、座布団、箪笥、炬燵、あかり、注連縄、簾、卓袱台、便器など道具を語り解説することにより和風とは何かを述べられている。
火鉢・火桶は冬の季語。
俳句を置いて終わる。
なつかしき人の名をきく火桶かな 籾山梓月
金沢のしぐれをおもふ火鉢かな 室生犀星
↧