<裏表紙あらすじ> 人間の代わりに「八咫烏」の一族が支配する世界「山内」で、世継ぎである若宮の后選びが始まった。朝廷で激しく権力を争う大貴族四家から遣わされた四人の后候補。春夏秋冬を司るかのようにそれぞれ魅力的な姫君たちが、思惑を秘め后の座を競う中、様々な事件が起こり…。史上最年少松本清張賞受賞作。 松本清張賞で、異世界ファンタジー!? ミステリではありませんが、なかなかおもしろそうだし、興味をひかれたので読みました。 結論から申し上げると、楽しく読み終わりましたよ。 烏が人間の姿をして(!) 暮らしている世界。 昔の日本(平安時代くらいのイメージでしょうか?)を思わせる設定なのがちょっと気になりましたが、この部分まで一から作れ、というのは無理でしょうし、この枚数では描ききれないでしょうから、ここはOKとすべきでしょうね。 今風の文章で、朝廷の世界がわかりやすく描き出されています。 時代物っぽい(平安時代っぽい?)せりふと、現代風のせりふが入り乱れるところも、受け付けない人もいると思いますが、個人的には楽しめてしまいました。 後宮でのお妃選びでの四人の候補の争い。嫌がらせとか女の争い、という構図から、どことなく友桐夏の諸作(「白い花の舞い散る時間」 (コバルト文庫)や「春待ちの姫君たち」 (創元推理文庫))を思い出しました。後半、物語の絵姿がガラッと変わるので、特に。 そう、この作品のポイントは、登場人物の立ち位置が、大きく大きく転換するところにあります。 視点人物の設定の仕方からして、前半と後半のずれをおおきくするためで、間違いなく作者の計算ずくだと思います。 ちょっと無理なところもあるんですが、そんなことを企んでたのか、とうれしくなってしまいました。 正統派のファンタジーファンの方にはダメ出しをくらいそうな感もありますが、こういうの大好きです。 続編(?) 「烏は主を選ばない」「黄金の烏」 (いずれも文藝春秋)も出ているようなので、楽しみです。
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