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ブラックウォーター 世界最強の傭兵企業

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ブラックウォーター――世界最強の傭兵企業

ジェレミー・スケイヒル/著 益岡賢/訳 塩山花子/訳
出版社名 : 作品社
出版年月 : 2014年8月
ISBNコード : 978-4-86182-496-8
税込価格 : 3,672円
頁数・縦 : 530p・20cm
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■傭兵会社は戦争を欲する
 “BLACKWATER: The Rise of the World’s Most Powerful Mercenary Firm” 2008 by Jeremy Scahillの翻訳である。訳者あとがきには、「初版に、改訂版の追加情報を増補して翻訳した」とある。ちなみに、このあとがきではタイトルが「~ mercenary army」となっている。改訂版でタイトルを変更したのか?
 それはさておき、近年、米国で増えている傭兵会社の中でも最大の規模を誇るブラックウォーター社(現アカデミ)の実態を暴いた書である。かの国では、この20年の間に正規軍兵士の数が激減しているという。その代わりに伸びているのが、傭兵会社との契約である。一時期、イラクでは米軍兵士よりも傭兵会社の契約要員の数のほうが多かったとか。戦闘員というよりは、政府から派遣された要人や、企業の施設の警護などが主な任務らしいが、兵士同様に武装しているので、立派な傭兵である。
 このように戦争や紛争で利益を上げる私企業の存在が、今後さらに米国を好戦国へと導いていくことになりはしないか? ある評論家が、米国はほぼ10年ごとに他国との戦争を仕掛けていると書いていた。軍産複合体ということがよく言われるが、そのなかにはブラックウォーターのような傭兵会社の存在も無視できない勢力となっているのだろう。

【目次】
バグダッド「血の日曜日」
巨万の富
プリンスの生い立ち
はじまり
ブラックウォーター参入前のファルージャ
ブッシュの家臣を警護する
スコッティ戦争に行く
奇襲攻撃
我々はファルージャを制圧する
二〇〇四年四月四日、イラク・ナジャフ
ブラックウォーターで働くアメリカ人のために
ミスター・プリンス、ワシントンへ行く
カスピ海パイプライン・ドリーム
チリの男
「戦争の売春婦たち」
コーファー・ブラック―本気の戦い
「死の部隊」と傭兵と「エルサルバドル方式」
ジョゼフ・シュミッツ クリスチャン兵士
ブラックウォーター・ダウン―ルイジアナのバグダッド
円卓の騎士

【著者】
スケイヒル,ジェレミー (Scahill, Jeremy)
 1974年生まれ。調査報道ジャーナリスト。米国の独立系ニュース番組『デモクラシー・ナウ!』などを舞台に、徹底した調査報道でアメリカ社会の暗部をえぐってきた。『ネイション』誌の特派員を務める。1998年、『デモクラシー・ナウ!』創設者エイミー・グッドマンとともに製作した、ナイジェリアのニジェール・デルタにおける米国石油会社の不正活動を暴いたドキュメンタリー『Drilling and Killing:Chevron and Nigeria’s Oil Dictatorship』で、「ジョージ・ポーク賞」を受賞。『ブラックウォーター』によって2度目の「ジョージ・ポーク賞」、さらには「ジェームズ・アロンソン社会正義ジャーナリズム賞」を受賞した。

益岡 賢 (マスオカ ケン)
 翻訳家。1964年生まれ。

塩山 花子 (シオヤマ ハナコ)
 翻訳家。1979年生まれ。千葉県出身。2000年代初めから大学職員として勤務するかたわら、市民運動に関わる。また、国内外の市民メディアでコンテンツの翻訳を担当し、執筆も行う。現在NGO勤務。

【抜書】
●戦争の外部委託(p57)
〔 一九九一年の湾岸戦争前に最後の駐イラク大使を務めた元米国外交官ジョー・ウィルソンは、「国家が、外交政策や安全保障上の目標を達成する手段として、国家が独占的に所有する武力行使や暴力行使の権利を外部に委託し始めるのは極めて危険なことだと思う」と述べている。戦争会社に支払われる何十億ドルもの金により、「彼らは米国内部で非常に強大な利益集団、しかも実際に武装した利益集団と化している。いつの日にか、彼らが誰に忠誠心を抱いているのかについて疑問が生じるだろう」。ウィルソンはこう主張した。〕

●民間契約要員(p58)
〔 二〇〇七年夏の時点で、イラクには正規の米軍兵士(一六万)よりも米国政府に雇われて派遣された「民間契約要員」(一八万)の方が多く存在した。これらの契約要員が働く会社は約三六〇社あり、世界中の一〇〇か国以上から人員が集められていた。〕

●ブラックウォーター(p67)
 ノースカロライナ州モヨックの沼地で誕生。

●エリック・プリンス(p68)
 ブラックウォーターの創始者。急進的右派クリスチャンの大富豪。

●イラク軍解体(p143)
 L・ポール・ブレマー三世、2003年5月から約1年間、米国占領当局の総督を務める。
 イラク軍解体というブレマーの「第2号命令」によって、40万人のイラク軍兵士が職を追われ、恩給なしの状態に置かれることになった。一夜にして潜在的なゲリラ戦の兵士供給源をつくりだした。

●米軍正規兵(p450)
 現役の米軍正規兵は、1980年代の210万人から、2003年イラク侵攻時には130万人へと激減。
 1994年から2003年までの期間に、国防省は米国に本拠を置く傭兵会社と3000件以上の契約を結び、その額は3000億ドル。

●アカデミ(訳者あとがき、p484)
 ブラックウォーターは、ニスール広場での虐殺事件の後、2007年に「ブラックウォーター・ワールドワイド」と社名変更。
 2009年に、「XeサービシズLLC」と社名変更、エリック・プリンスがCEOを退く。
 2010年に数人の個人投資家グループに買収され、「アカデミ」と社名変更。軍事訓練などのサービスを世界各地で展開している。

(2014/11/14)KG

〈この本の詳細〉
honto: http://honto.jp/netstore/pd-book_26254621.html
e-hon: http://www.e-hon.ne.jp/bec/SA/Detail?refShinCode=0100000000000033131471


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