2012年の「このミス」「週刊文春」ともに海外編で堂々の第一位を獲得した作品(ついでにじゃないが、アメリカ探偵作家クラブ賞、英国推理作家協会賞も取っている)。となればハズレはなかろうと思って読んだら、見事に大当たり!とても面白かった。内容紹介を今更するまでもないので(と手抜きの言い訳)、ストーリーは略。
読み始めて感じたのが、翻訳物にしては異様にリーダビリティが高い、ということ。これは原作の良さもあろうが、やはり翻訳者の越前敏弥氏(←初めて読む)の力量によるものだろう。 設定というか題材が面白い。金庫破りの〈解錠師〉の話、しかもまだ17歳という若さで、この「悪の道」に踏み入れざるを得なくなった経緯が、学園ものとしての例のスクールカーストを背景に一人称で描かれる。幼い頃の悲劇(これは終盤になるまで明かされない)のせいで全く喋れなくなった少年の画才とそして解錠趣味へののめり込みという設定から始まり、互いに絵で交感しあう美しい恋、闇の犯罪組織との関わりへの転変、解錠技術習得のディテール、その現在と過去とが並行して語られていく展開もスリリング。一人称だけに主人公の心情、その切なさ辛さがストレートに伝わってくる。犯罪ノベルにして青春・恋愛小説。いやはや堪能させられた。↧