- 作者: 佐藤 雅美
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2010/10/08
- メディア: 文庫
佐藤雅美の縮尻鏡三郎シリーズの第4弾(だったと思う)です。江戸幕府において超エリートコースにのっていた主人公が、ちょっとしたことで、コースを外れてしまい、今や被疑者、容疑者一時預かり施設である大番屋の元締という閑職につきながら、持ち込まれる相談事に不本意ながらも応えてしまうという、毎度おなじみのシリーズです。
毎度おなじみといえば、落語の決まり文句みたいなものですが、ここで書かれている話は落語みたいなもんです。まあ、落としどころは物語ゆえか必ずしも落ちていないのですが、全体の雰囲気からずれば人情話に近いところがある。フィクションではないので本当のところはわかりませんが、江戸時代の時間の流れはそういう雰囲気を醸し出すのに十分な舞台だったのでは?なんて思うわけです。「文七元結」みたい話はこうしたところから生まれたのでしょう。それを小説という形にすると、佐藤雅美の作品になる。紋蔵シリーズや半次シリーズもそうした雰囲気がある。落語好きの人には是非読んでいただきたいシリーズの一つです。