先週末(7月20日)、地元国際交流協会主催の国際理解講座で、フランス大使館にお勤めのフレデリック・トゥルモンドさんの講演があり、僕はボランティアとしてイベント運営のお手伝いをしてきた。テーマはフランスのマンガ「バンド・デシネ」(以下、BD)の紹介と、あわせて日本のマンガのフランスでの紹介のされ方の紹介だった。
イベント運営のお手伝いといえば、ポスター・チラシのデザイン考案から、会場の座席の配置とか、講師の方との進め方の打合せとか、司会進行とかも含む。さらには、集客が芳しくなければ個人的なつてを頼って「サクラ」の動員に奔走し、質疑応答が盛り上がらない時のことを考えて予め質問を準備しておくことすらやる。今回は、中学で漫研に所属してイケメン男子のイラストを描く技術だけが格段に上達している我が娘にも来てもらった。僕自身はこれまで全くBDに造詣がなかったので、当日、念のために気のきいた質問ができるよう、午後のイベント開始に先立って早めに自宅を出て、近所の図書館で予習をやった。
その結果わかったことが幾つかある。
その1:BDは左開きで、吹き出しが横書きである。日本のようにマンガが週刊誌等で先ず連載されて、それがその後コミック単行本となるという流れはBDでは少なく、BDはもっぱら書き下ろし単行本が中心で、しかもよくて年1回しか作品が刊行されない。BD単行本はA4ハードカバーで、しかもその殆どが全頁カラー印刷である。
その2:日本のマンガはページをどんどんめくっていくので1つのコマで立ち止まることは滅多にない。いわばコンビニ立ち読みにとても向いたフォーマットだといえる。一方、BDは1つのコマが非常に丁寧に書き込まれており、パラパラとページをめくっていくのではなく、1コマ1コマをじっくり読んでいかないとストーリーがなかなか理解できない。
その3:BDは従って、マンガを読むというよりも、本を読むというのに近い感覚となる。大人の読み物としても十分に耐える作品も多く、誕生プレゼントで贈られることも多いらしい。
その4:『AKIRA』で有名な大友克洋は、BDの影響を受けている。有名なBD作家の1人がメビウスという作家で、宮崎駿監督や、『20世紀少年』、『マスター・キートン』、『MONSTER』の浦沢直樹などもメビウスの作品に感銘を受けたのだとか。
その5:最近映画化された『タンタンの冒険』も、元はBDを代表する作品だったらしい。
幸い、こうして予習して準備していた質問項目も、当日のセミナーでは使う必要もないくらいに幾つか質問が出たので必要なくなった。その一方で、元々マンガ好きの僕自身が、講師の方のお話に魅かれてしまい、セミナーが終わってからも、BDについていろいろ調べたり、日本語訳が出ている作品を読んでみたりするようになってしまった(笑)。
その第1が今年5月に出たばかりのBDガイド本。実はこの本の存在はかなり前から知っていた。最寄り駅の駅前の書店で1冊置いてあるのを見たことがあり、それほど売れる本じゃないだろうとたかをくくっていたら、その後店頭から姿を消した。仕方なくアマゾンで購入しようとしたが、注文が遅かったのでセミナー当日までに発送が間に合わず、結局イベントが終わってから読み始めた。
BDの基礎知識、BDの歴史、世界的に有名な2大巨匠、メビウスとエンキ・ビラルだけでなく、新進の作家にもスポットを当て、日本でも紹介されているBD作品を相当に網羅的に紹介しており、今後どのような作品を読んでいくにしても、手元に置いて時々チェックを入れたい参考書となっている。
セミナーの講師だったフレデリック・トゥルモンドさんは雑誌『ユーロマンガ』の編集長を務めておられ、当日もバックナンバーのコピーを何冊か持って来られていて、会場で販売されていたので、1冊買ってみることにした。BDの巨匠メビウスがお亡くなりになられた直後の編集だった第7号はメビウス特集。ということで、幾つかあったバックナンバーのうち、第7巻を購入した。でも、この号に収録されていたメビウス作品『猫の目』はかなりグロテスクで、ちょと失敗したかなと後悔。ユーロマンガのHPでバックナンバーを眺めてみて、『赤いベレー帽の女』と『ブラックサッド』が掲載されている号の方が個人的には好みに合っているような気がした。(フレデリックさん、すみません…)
はじめての人のためのバンド・デシネ徹底ガイド (玄光社MOOK)
- 作者: 原正人
- 出版社/メーカー: 玄光社
- 発売日: 2013/05/31
- メディア: 大型本
内容(「BOOK」データベースより)最後の1冊は、近所の市立図書館に所蔵されているのを知り、今週末に借りて読んだエンキ・ビラルの作品。紛争下のサラエボで生まれた3人の孤児――驚異的な記憶力を持つナイキ、テロ組織の訓練兵アミール、宇宙物理学者レイラが、謎の人物ウォーホール博士の企てる陰謀に巻き込まれていくというお話で、正直、一度読んだだけでは何が何だかよく理解できなかった。ただ、この解説を読む前に通しで読んで感じたのは、やはりこの作品の世界観が『ブレード・ランナー』や『フィフス・エレメント』ととても似ていることで、ストーリーが何回でも絵には魅かれた。図書館に返却する前にもう1回か2回、じっくり読み直してみたいと思っている。 機会があれば、これからもBD作品をブログで紹介していきます。 漫研所属の我が娘も、こういう作品が描けるようになったらいいのですが・・・。
BD(バンド・デシネ)の衝撃のヴィジュアル世界!『ブレード・ランナー』、『フィフス・エレメント』のイメージの源泉となり、圧倒的なグレードにより、魅力的なヴィジュアルを生み出し続けるフランスのコミック界、最大の話題の書。