<裏表紙あらすじ>
死神にやられたとの言葉に首をひねる表題作を皮切りに、先行きを危ぶまれていた噺家二人が急に上達する「無口な噺家」、元名物編集長の安楽椅子探偵譚「幻の婚礼」、牧&緑コンビ定番の張りこみで決する「へそを曲げた噺家」、『幻の女』ばりに翻弄される「紙切り騒動」の五編を収める。編集長に頼ってばかりはいられない、間宮緑探偵孤軍奮闘の巻も微笑ましい、好評シリーズ第三弾。
先日アップした「木洩れ日に泳ぐ魚」 (文春文庫)までが6月に読んだ本で、この「やさしい死神」からが今月読んだ本となります。
「三人目の幽霊」 (創元推理文庫)
「七度狐」 (創元推理文庫)
に続くシリーズ第三弾。
長編だった「七度狐」 は、芸に憑かれた落語家たちを描いていましたが、この「やさしい死神」は人情話集とでもいった趣。
落語にもいろいろなパターンがあるように、落語ミステリにもいろいろなパターンがある、ということでしょうか。
帯についている惹句がステキで
「落語には笑いも涙もあるけれど何といっても謎解きがあるのです」
というもの。
もうひとつ
『「落ち」が見えない面白さ』
という方は、勇み足でしょうか。いずれの作品も、ラストの見当はつきやすいですから。ただ、その分、人情話としての側面が一層色濃く立ち上がることになっていますので、そういうバランスで作者は作品を設計したということでしょう。悪人の登場しない世界観は、ある意味落語にぴったりですもんね。
シリーズは、このあと途絶えているようですが、また復活することを期待します。
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