橋本毅彦/著
出版社名 : 岩波書店(岩波新書 新赤版 1428)
出版年月 : 2013年5月
ISBNコード : 978-4-00-431428-8
税込価格 : 756円
頁数・縦 : 195,4p・18cm
18世紀から20世紀半ばにかけて、近代産業の発展に大きく寄与した技術を発明した人物10名を取り上げ、それぞれの発明に至る軌跡と社会に与えた影響などについて解説する。
【目次】
第1章 ハリソン―世界時刻の計測
第2章 ワット―産業革命の原動力
第3章 ブルネル―大英帝国の技術ビジョン
第4章 エジソン―発明と経営の間で
第5章 ベル―電信から電話へ
第6章 デフォレスト―無線通信とラジオ放送
第7章 ベンツ―ガソリンエンジン搭載の自動車
第8章 ライト兄弟―空間意識を変えた飛行機
第9章 フォン・ブラウン―宇宙ロケットとミサイル
【著者】
橋本 毅彦 (ハシモト タケヒコ)
1957年東京生まれ。東京大学教養学部卒業、ジョンズ・ホプキンス大学博士課程修了、Ph.D.取得。東京大学教養学部講師、東京大学先端科学技術研究センター助教授を経て、東京大学大学院総合文化研究科教授。専攻は、近現代の科学史、技術史。
【抜書】
●グリニッジ標準時(p56)
鉄道路線の拡張に伴って標準時制度が導入された。
太陽の運行に基づく各地方の地方時の差は、数分から数十分に達する。
列車を東西に走らせるグレート・ウェスタン鉄道では、時差が問題となり、ロンドン時間を標準時として採用することを決定した。
他の鉄道も同様に標準時を採用。さらに、グリニッジを標準とする世界時へと発展していく。
●四工程エンジンの特許無効(p135)
ベルギー人のエティエンヌ・ルノワール、二工程の内燃機関を製作。
ドイツの技術者ニコラウス・オットー、四工程に改良。気体状の燃料を燃やし尽くすことができるので、燃料効率も燃費もよくなる。
1867年に1号機が完成。ルノワール・エンジンよりも3倍も燃費が良かった。
1876年、ガスの爆発力を直接駆動力として利用する新しい四工程エンジンを開発。
特許を申請したが、1884年、基本特許は無効と判断される。フランスのアルフォンス・ボー・ド・ロシャがすでに考案、1861年に論文として公表していたため。
〔特許が無効となったことで、オットー式の効率的なエンジンはドイツ各地の会社によって製造され、工場や発電所で利用されるようなっていった。〕
●ダイムラー(p143)
ゴットリープ・ダイムラー、オットーの下で四工程エンジンの開発に携わった。
ベンツが三輪自動車を製作した1885年、ダイムラーは自動二輪車を製作。翌1886年、自作のエンジンをつけたモーターボートと四輪自動車を製作。
ベンツの四輪自動車は1890年。技術史では、三輪車も自動車として認め、自動車の発明者はベンツということになっている。
ダイムラー、1890年にダイムラー自動車製造会社を創立、フランスをはじめとして各国で製造販売を展開していった。
●システム・ビルダー(p192)
〔 エジソンの伝記作者は、彼を「システム・ビルダー」と呼んだ。エジソンの取り組んだことは、単に電球を開発し製造するだけでなく、電気照明を一つの利用目的とする電気事業を生み出すことだった。そのような大事業を創業することは、一つの大きなシステムを創造することを意味した。新しい発明が、その発明を支える技術を必要とし、それら多くの補助技術が新発明を社会で生かす技術システムをつくり出す。エジソン自身、そのことをよく心得ており、自らの課題をそのようなシステムを構築することと自覚した。〕
しかし、エジソンは、いくつかのシステムにおいて標準化に失敗する。
エジソンのつくったパール街の発電所における発送電のシステムは直流体系だった。現在、どこでも交流方式が採用されている。(p72)
蓄音機では、円筒式(蝋管式)にこだわり、ディスク式のビクター社、コロンビア社に敗れた。エジソンの蓄音機は、ノイズが少なく、音質に優れていたが、録音した歌がフォークソング中心で、オペラのレコードを次々に販売して人気を博した両社に後れを取った。ハードには強いがソフトに弱かったエジソン。(p80)
(2013/7/27)KG
〈この本の詳細〉
honto: http://honto.jp/netstore/pd-book_25630398.html
e-hon: http://www.e-hon.ne.jp/bec/SA/Detail?refShinCode=0100000000000032924851