Quantcast
Channel: So-net blog 共通テーマ 本
Viewing all articles
Browse latest Browse all 53333

「経済人」の終わり

$
0
0

 ドラッカーの処女作

ドラッカー名著集9 「経済人」の終わり

ドラッカー名著集9 「経済人」の終わり

  • 作者: P・F・ドラッカー
  • 出版社/メーカー: ダイヤモンド社
  • 発売日: 2007/11/16
  • メディア: 単行本
The End of Economic Man: The Origins of Totalitarianism

The End of Economic Man: The Origins of Totalitarianism

  • 作者: Peter Ferdinand Drucker
  • 出版社/メーカー: Transaction Pub
  • 発売日: 1995/02
  • メディア: ペーパーバック

 執筆開始が1933年と言うナチス政権成立の年で、1909年生まれのドラッカーは当時若干24歳だったのか!?と思うと凄い、ユダヤ系オーストリア人なので反ユダヤを掲げるナチス台頭への切実感は高かったのでしょうけど。オーストリア人と言えばやはり戦争中に「隷属への道」を上梓したハイエクもいるね、ユダヤ人なら「全体主義の起源」で有名なアレントもドイツ系ユダヤ人だ。私は東西冷戦の最中に書かれた「革命について」しか読んでいませんが、本書を含め「隷属への道」と「革命について」(全体主義の起源は読んでないので)は保守を自称する人なら是非読んで欲しい。  とは言っても、「隷属の道」が社会主義は全体主義と同じと言う主張で、「革命について」がフランス革命やソヴェト革命が如何にダメで英米の革命(一般に革命と呼称されないが)だけが古代ギリシア都市国家に通じる真の民主主義と主張するのに対して、本書では、ブルジョア資本主義やマルクス主義が何故見放されて今日のファシスト全体主義の隆盛を見るに至ったか?をリアルタイム分析しています。  ケインズが「平和の経済的帰結」で指摘した通りのドイツへの莫大な賠償金はハイパーインフレを引き起こして、多少なりとも蓄財のあった小金持ちや中流階級に年金生活者の財産や生活を破綻させ(貨幣価値が1兆分の1になったりすると堪まらんよね)、そんな中間層の取り込みにナチスが成功したのは「ナチスの発明」を読めば明白。徹底したポピュリズム政策を展開して、失業者対策や対外債務の帳消しはやってのけたからね

 そう、ナチス党は徹底したポピュリズム政党だったそうで、党の綱領らしき物も特に無く目先の大衆支持の為なら何でもしたとか。代表例として「農民は穀物の値上げ、労働者はパンの値下げ、パン屋と食料品店はより大きな利益を獲得する」と言うゲッペルスの1932年の演説を引用しています。が、日本人としてはこの相反する矛盾だらけの演説は聞き覚えがないか?  「政権交代」とか息巻いていた頃の民主党はほぼこのゲッペルスと同じような事を言ってた記憶が、そう言えば与党時代の民主党には綱領も無かったしな。大衆受けする相矛盾する公約を連発するのもソックリ、が、僅か3年で崩壊した日本の民主党政権に対してドイツのナチス党は一党独裁の末世界大戦に突入した、この違いは何?と言うのが本書の主題ね。自民党政権にちょっと失望していた日本人と最も民主主義な国家だったワイマール共和国や平和と平等を約束しながら全然実現すら出来ない共産党に対する当時のドイツ人の抱いた失望との深さとの違いなんだけど。  ハイエクとは違い、マルクス主義を叩く本では無いのですが、労働者と搾取階級しか存在しないのだから搾取階級を排除すれば平和と平等がもたらされる筈が現実には特権を持つ中間階層が増大する問題を説明出来ていないマルクス主義は破綻している、と厳しいね。執筆開始が1933年で刊行が1940年なので、その間に加筆された部分なのか?巻末部分ではスターリンのソヴェトはファシスト全体主義国家であると断定しています。なんて、「左翼」から唯物論その他理論が欠落した残滓の「サヨク」にゃどうでも良い話か。  冒頭に当時言われていたファシズムの本質として「剥き出しの残虐性」「マルクス主義の勝利を妨害する資本主義最後のあがき」「幼稚な大衆向けプロパガンダ」と言う一般論を挙げて全部否定しています、いやさ、80年後の現代でも同じような事を言って「敵」(見えないネット右翼とか)を攻撃する人がものを書いて生活出来ているのだからまだまだ賞味期限は来ていないし使える間はコレを繰り返すんじゃないかな?  むしろファシズムの特徴として上記の矛盾した大衆受けのする公約に加えて「対案を持たない否定」「敵を作り出す」と定義してある、日本のサヨクそのものじゃないか。共産党のポスターには対案のつもりなのか?金持ちに課税強化しろ!とか書いてあるけどああ言う匿名掲示板の対立煽りみたいなのはネット同様現実世界でも荒らし行為にしか見えない。民主党のタレント議員たちもカメラの前で否定・批判を散々繰り返した挙句、有権者に「評論家に実務は無理」と言う教訓をもたらしただけだったなと。  敵を作り出すのはもう、今安倍首相に色々なレッテル貼りをして悪の象徴と言う事にして全力で叩いているメディアやリベラル日本人がファシズム全開で空回りしているのがもうね。「我々は平和主義者だ!ファシストではない」と主張されるサヨクの方もいるのでしょうけど、ナチスは政策も支持者も戦争を望まない方向だったそうな。それでいて国内リソースを軍拡に全投入していたのだから意味不明だけど。  そもそも全体主義経済学も平和と平等の実現のために考え出された思想で、考案者の弟子達がナチス高官にいたとか。なので平和や平等を目指す思想を信奉している連中がファシズムに走る事は全然不思議じゃない、日本でも「ファシズム憲法9条」とか「ファシズム無防備主義」なんてのが成立するかも。しかし、ファシズム的大衆運動を全力で展開する日本の扇動家があまり相手にされないのは誰も現体制に失望していないからなんだなと。  今までの社会制度がまともに機能しなくなって新しい社会秩序が生まれるまでの過渡期に、旧秩序への絶望がファシズムと言う形で具現したと言うのがドラッカー青年の見立て。タイトルの「経済人」とは「啓蒙」とか、時代を象徴する言葉を意味していて、ブルジョア資本主義にせよ社会主義にせよ経済思想中心の時代が終わろうとしていると言う意味だけど、経済人て終わったのかね?  ドラッカー本と言えばの上田惇生氏による新約本ですが、執筆時が1930年代なので「大戦」が第一次世界大戦を指したり、当時の空気や各国メディアの論調なんて言う歴史の授業じゃ欠落している情報が詳しく載っていてそこも面白い。イタリアのファシスト党がフリーメイスンを危険視(上記の通り「敵を作り出した」だけでしょうけど)していたのは初めて知ったわ、ユダヤ陰謀説と並んでこの辺りも大衆受けする定番の陰謀論なんだなと


Viewing all articles
Browse latest Browse all 53333

Latest Images

Trending Articles



Latest Images