「ヴィルヘルム・マイスターの修行時代」 ゲーテ作 山崎章甫訳 (岩波文庫) 「美わしい魂の告白」(第6巻)について
「ヴィルヘルム・マイスターの修行時代」は、全8巻の構成です。 (文庫本では三分冊。上=1~3巻、中=4~6巻、下=7~8巻) そのうち、第6巻だけが、「美わしい魂の告白」と題されています。 ある医師が渡してくれた、某婦人の手記という形をとっています。 突然挿入されるエピソードです。 私は最初、この巻を、「いったい何なんだ」と、戸惑いながら読みました。 前後のつながりが分からないため、意味のない物語のように感じたのです。 だからこの巻が、全体の調和を乱しているように感じました。 しかし実際は、この巻が前後半をつなぐ働きをしているようなのです。 後半に入ると、前半の人間関係の謎が、次々と明かされます。 そして、その謎解きの鍵となっているのが、この第6巻です。 座長ゼルロの妹を振った男、以前演劇活動を支援してくれた伯爵夫人、 一座の女優を追っかける青年、そしてヴィルヘルムの憧れの女騎士・・・ 一見ばらばらだった人々は、この巻の中に収斂していました。 さらに、ヴィルヘルム自身が、「美わしき魂」の一族とつながり・・・ その後、少年フェーリクス出生の意外な事実や、マリアーネのその後や、 竪琴弾きの老人と、ミニョンの出生の謎まで、次々と明かされていきます。 いろんなものが次々につながっていって、不思議な感じさえします。 そういえば、修業証書を渡される場面は、少しオカルト的でした。 人生には、多少のオカルトめいたものが、含まれているのかもしれません。 突然符合のようなものを感じたり、信じられないような偶然があったり。 ヴィルヘルムにとって、オカルト的なものを感じるきっかけになったのが、 「美わしい魂の告白」を読んだことだったのかもしれません。 そういう意味で、この第6巻は、全体の要になる重要な巻だと思います。 さて、「ヴィルヘルム・マイスター」には、続編「遍歴時代」があります。 修行が終わったのに今度は遍歴か、と驚いてしまいますが。 「遍歴時代」も、岩波文庫から三分冊で出ていたのですが、現在は品切れ。 重版を強く望みます。 さいごに。(ワンピース) 最近、娘がはまっているのが、「ワンピース」。 小学校から帰ってきてから、必ず見ているようです。↧