「カビの不思議」 著者:椿啓介 発行:筑摩書房 (ちくまプリマーブックス) 椿啓介(1924年~2005年)の作品。菌類学者。 筑波大学名誉教授、日本大学薬学部教授などを歴任。1993年、第3回南方熊楠賞を受賞した。 カビと人間の関係は複雑である。梅雨時には食物、衣服、風呂などに発生する。 食用のキノコ類や抗生物質などのように人体に有益に作用するかと思えば、 毒キノコや有害のカビなどのように発病のきっかけともなる。 俳句では、虫干し、後の雛、水餅、風入れなどの季語が馴染み深い。 カビとの戦いや、共存している人々の暮らしが見えてくるものが幾多も詠まれている。 黴の宿寝すごすくせのつきにけり 久保田万太郎 黴る日々不安を孤独と詐称して 中村草田男 菌類の分け方もまた複雑であるようだ。 カビとキノコと酵母のことを学問的に菌類と呼ぶらしい。 この三つにさらに変形菌(粘菌)も加えて大きく菌類と呼ぶ人がいたり、 菌類すなわち細菌類(バクテリア)と勘違いする人もいるので、 カビとキノコと酵母の三つだけを真菌類と呼ぶことが多いらしい。 この三つのグループだが、どこまでがカビでどこからがキノコであるか判然としないのだそうだ。 酵母の場合も同様で、明確な枠組みはないらしい。 本書で椿啓介先生はルーペを持つことを勧めている。 「山道を歩きながら立ちどまり、あるいはどっかと腰をおろし、 ときには落ち葉の上にはいつくばりながら、ルーペ片手に小枝や一枚の葉や、 一個の兎糞の上のカビに目をこらす。まわりの景色も目の隅に入れて。」 詩想多き椿啓介先生のミクロの世界のお話。 ルーペをポケットに入れて、もうひとつの世界を探しに行くとする。
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