精神を病んで入院していたジュリーは、著名な資産家に雇われて彼の甥の面倒を見ることになるが、仕事が始まって早々4人の男たちに連れ去られる事態に。命からがら彼らのアジトを脱出し、子ども連れで逃避行を繰り広げるが…
冒頭でいきなり殺し屋の仕事風景が登場するわ、ヒロインのジュリーは逃走用の車を確保するために何のためらいもなく通りすがりのドライバーを撲殺するわ、かなり好みが分かれそう(※穏当な表現)です。
あまりにも支離滅裂な言動が強烈なヒロイン、業務上の負傷よりも前に胃の不調で死にそうな殺し屋、大人の事情なんか気にせず泣いて遊んで疲れたら眠る悪がき等々、格好いいけどベタすぎて笑ってしまう人々が織りなす犯罪小説です。次々に人が死んでいるのに笑うのはいかがなものかと思われるかもしれませんが、わたくしの分類ですと「乾いたユーモア」の本棚の一番目立つところに置きたい一冊です。
誘拐事件の意外な黒幕などといういかにも横道な展開があるくせに、それ以外の全部がもれなくぶっ壊れている感じがたまりません。中条省平さんの、原作と旧訳へひとしく愛情を注ぐあとがきも必読です。これはべた惚れして新訳してしまうのも不思議じゃない、熱狂を呼び起こす小説ですよ。
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マンシェット『愚者が出てくる、城寨が見える』(光文社古典新訳文庫)
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