短編5作収録。 『観覧車』 もてない男女が冬の観覧車に... やや救いのある話。 『ソリスト』 ロシア人名ピアニスト、アンナ・チェキーニナの狂気性。 篠田節子は音楽を題材にした作品が多い。 実力によって得た名声の裏にあるアンナの過去に 音楽とソビエト社会主義の狂気を感じる。 『灯油の尽きるとき』 義母の介護に疲れ切った昌美は偶然、ある男性と出会うが... 希望のない生活に追われた主婦の救いが打ち砕かれてしまうところに切なさが漂う。 『戦争の鴨たち』 アフタニスタンの戦場に乗り込んで名を挙げたいカメラマンと小説家が体験したことは... 題名が秀逸。 『秋の花火』 女に執着し酒に溺れる高名な指揮者と その教え子が属するアマチュア楽団の繊細な人間模様。 「性」から逃れられない大人の味わい深い話だった。
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