今回はなかなかの異色作でした!
特に異色だったのは、貴族のキャラクター。
貴族といえば見た目も麗しい風貌をしているものなのですが、
今回登場したマキューラ男爵はチビ・デブ・ハゲと三拍子そろってる。
大層な登場シーンでこの容姿が現れたものだから、最初から出オチ(笑)
でもウィークポイントばかりじゃないんです。
なんと陽光の下を歩ける貴族で、貴族やDに関する大事な鍵を握っているとか…。
大口をたたいてはいるものの、たいした攻撃力もなく、
何よりもこの容姿ですっかり恐怖心をなくした人間たちは、
男爵を好奇の対象として捉え、都に高値で売り飛ばそうと、次々と盗賊がやってくる。
そのたびにいろんな目に遭う男爵が面白かったのですが、もはや一人ギャク状態です。
こういう扱いを受ける貴族もなかなかいないですよね。
マキューラ男爵のもとへ近づいてくるのは、こういうならず者ばかりではありませんでした。
貴族の力に魅せられた者、あるいは怨みを持つ者。
どちらも狂気の沙汰に陥った二人の者が。
一人目はミリアン夫人。
夫婦で町の発展の基礎をつくり、町民たちが功績を称えている人物だが、
町の外れの森でひっそりと暮らしているという。
夫人はマキューラ男爵をつかまえて、夫を救ってほしいと懇願します。
貴族の研究家だった夫は、貴族の超人的な技術を解明し、
やがて自ら貴族になりたいと望んだのです。
貴族の生物的な資質として、人間が羨むもの…不老不死。
その結果、ミイラと化し、ただ呼吸するだけの生ける屍として長らえているという。
夫人の望みは、この夫を元の姿に戻してほしいというものでした。
その方法とは、貴族の血を輸血すること、その後で前頭葉を食べさせること。
貴族以上にむごい…。
ベッドに縛られてるマキューラ男爵の姿を想像するだけで気の毒になりました。
二人目はベル・カミスクリ夫人。
競りにかけられた男爵を落札した老婆で、様々な品のコレクターだというが…。
実は貴族を手に入れるのは二人目だそうで、
先にとらわれていたベグリイ公は、マキューラ男爵とも五千年来の旧知の仲なのですが、
脳手術を施されて無残な姿をさらしていました。
彼女が個人的に貴族に何かをされたわけではないのですが、
貴族に対する人間の怨みは根深いもので。
今までの歴史で貴族が人間にしてきた仕打ちに対し、種としての怨みが脈々と受け継がれているのでした。
人間にとって貴族とは、そういう怨みの対象なのですね。
こうしてみると、人間と貴族のどちらが残虐なのか。
道中で出会ったピロンとレダという子どもたちは、いろいろあったものの、
最終的には「人間と貴族も同じなのかもしれない…」と。
これこそがDが密かに心に抱いている思いなんだと思うし、だからこそ今回のDは所々で口元をゆるめています。
さて、愛すべき憎めないキャラのマキューラ男爵は、作者にすら愛着をもたれたおかげで生き延びました。
Dのもとを逃れ、きっとまたいずれかの作品で再開することでしょう。
それと、Dが飲みに誘われてついていくという、かなーり貴重な場面もあります。
こんな人が飲み会に来てくれたら舞い上がっちゃうよねぇ(笑)
Dはお酒も強いのです。
Dの眼前で五千年の眠りから覚醒したマキューラ男爵は、その容姿といい行動といい、従来の貴族の概念からは遠くかけ離れた珍妙な存在だった。
だが、彼は、彼自身がそうであるように陽光の下で生きる貴族を作り出す方程式の解を手にした研究者であり、その研究材料として多くの人間を惨殺して告発された貴族でもあった。
移動裁判所への護送の任務を負い、男爵と行を共にすることになったDに、男爵への欲と怨みにかられた多くの的が襲いかかる。

Dー血闘譜 (朝日文庫 き 18-27 ソノラマセレクション 吸血鬼ハンター 16)
- 作者: 菊地 秀行
- 出版社/メーカー: 朝日新聞出版
- 発売日: 2008/01
- メディア: 文庫





