著者の前作(シリーズ第一作)
「147ヘルツ 法医昆虫学捜査官(仮)」 虫から教わることは一杯あるんだなぁを読んで、なかなか面白かったので、二作目も購入して読んでみました。今回も虫博士はちょっと弾けすぎながらも、虫たちの生態から事件の”糸”をたぐり寄せ、犯人に迫っていきます。その手法というか、虫の話が今作品もとっても興味深かった。
★ あらすじ
高架下の貸しトランクルームで腐乱死体が発見される。ひどい状態で、容姿が判別付かないのはもちろん、死亡推定時刻を推測するのも難しいありさま。捜査一課岩楯警部補(前作から引き続き登場)は、組織になじめていない、今どき青年の月縞刑事をパートナーとして指名し、事件にあたることにした。月縞刑事は腐乱死体の匂いにひるむことなく、”現場維持”のために、そしてなによりも遺体に群がる虫たちを逃がさないために、鑑識班が到着するまでトランクルームの扉を閉めて待っていたのだ。ものすごい蠅たちがぶんぶん飛び回る中で。その話を聞いて、岩楯は「こいつはパートナーとしていいかもしれない」と直感で感じ取ったのだ。
そして真打ち登場。法医昆虫学者の赤堀涼子が今回も捜査に加わったのだ。現場に到着するなり、未だ腐乱臭が残っていることなどものともせず、トランクの隅々をなめ回し、さらにはトランクのルームの周りや近くの公園にまで”捜査”範囲を広めていく。そしてそして今回も重要な発見を虫たちから聞き出したのだった。それは、蟻たちが運んでいたサギソウの種子だった。
過疎化に悩むある村では、空き家や(老人だけになった世帯の)空き部屋を格安で貸し出し、都会から人を呼び込もうとしていた。薮木もそんな一人。老婆だけになった家の離れを借り、アトリエとして使っていたのだ。
彼と同様に都会から移り住んできた夫婦が何組かあった。行政の振興事業の思惑はうまく行きつつあったが、元々の村民たちと、新しい住民たちとの間にはまだ壁や距離感というものが存在していた。
そんな村には雨乞いにまつわる言い伝えが残っていた。薮木が大家の老婆から聞いた話では、その昔、村で雨乞いをしたときに若い娘を生け贄にしたとか。その娘ののろいがまだ残っているのだとか。果たして、薮木はある夏の夜、人魂と、若くて美しい娘(の幽霊?)に遭遇したのだ。
さて、事件現場は都会の片隅。ところが、虫たちがそんな現場と、幽霊伝説の村とを結びつけることになるのだった。赤堀博士は虫から何を聞き出したのか。新米の月縞は岩楯の見込み通りに活躍してくれるのか。今回も事件解決は虫たちの活躍にかかっていた。
★ 目次
- プロローグ
- 第一章 彼女と虫のテリトリー
- 第二章 半陰陽が語るもの
- 第三章 人魂とアナログ時計
- 第四章 「R」に絡みついた蛇
- 第五章 ハートビート
- エピローグ
★ 感想
例によって、虫が苦手だったり、死体解剖シーンの描写がダメ!って方にはおすすめできません。が、それ以外の人にはおすすめですよ、今作品も。
悪い点だけ先に言っちゃうと、今回もまた刑事たち、そしてなによりも虫博士が少々はしゃぎすぎ。その分、暗く重く、気持ち悪い話も緩和される効果はありますが。
また、村の住人の薮木と、薄幸の美女は、かなり凝った人物設定になっているんですが、あんまりその良さを発揮できずに話が終わってしまった感があります。もったいないな。次回、登場してくれたらそれはそれで面白いけど。
虫の生態に関してと、遺体の解剖や腐敗の仕方などは、ふーんなるほどなるほど、そんなことがあるのかと感心することばかり。絶滅危惧種のさらに上を行く”レア”な存在の虫が犯人の足取りを追うための重要なヒントになるんですが、ほほぉって感じですよ。話には聞いたことがありますが、私もそんなレアな虫を実際に見てみたくなりました。
虫に教わりつつ、犯人に迫っていくパターンがうまく確立された感じがして、ついつい引き込まれて読み進めてしまい、「やめられない、とまらない」状態でした。
ということで、虫がダメな人以外にはおすすめの作品です。もう、電子書籍版も出ていますよ。私もKindle版で読みました。
電子書籍版
紙版
私も読みました。参考書としてはとってもいいと思うんですが、絶版なのかな。古本では手に入るようです。
Kindle版で再版してくれないかなぁ。
原書版ならば今でも入手可能。Kindle版がちゃんと出ています。