日本人の英語に関する著作は、玉も石も含めて、また日本人、外国人の著作ともども、山ほどあるが、本書は一味違っている。
一般に、学校英語における「文法」重視が批判され、ネイティヴとの会話力の養成が急務というのが、現在の主流だろう。
だが著者は、文法、とりわけ、英文の構文法を軽視しない。文法は語の並べ方の問題ではなくて、何をどう表現するか、に決定的だからであり、発話の基本は語ではなく、文章だからだ。
同時に著者は、発話者同士の間に形作られる対話の空間に、焦点を当てる。何語であっても、それこそがコミュニケーションの基礎であることは、違いなかろうが、その空間の性質は、日本語と英語では異なる点がいくつかある。
特に英語では、対話者一人一人が、積極的にその空間造りに参加する、強い意志を持ち続けることの必要性が、強調される。
また、その意志を具体化するために、どのような英語独特の工夫や技術があり得るのか、実際の例に即しながら、著者は平易に説いていく。
文化人類学の研究者としての著者の学問的な背景も、随所に生きていて、小さな本だが、学ぶところは多い。(村)
《以上、「毎日新聞」(’13・6・9)書評欄から》
Kuniko Miyanaga
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